中本純也

2022/09/02

会期:2022.9.10(土)- 19(月)12:00-18:00
休廊:6(火),7(水)
在廊:9.10(土)

ロボットは心を持つようになるのだろうか?
2019年の展示会ではそんな話をしていたが、会えば未来の話をしている。長らく一緒にやってきて、さて今回のために作ってくれた作品を並べてみると…ずっと作り続けているもの多数。生活の中によくある、普通の、使いやすいもの。ギザギザの豆皿も、カプセルみたいな蓋物も、のっぺらぼうみたいなお皿も、スプーンも、何度も何度も見てきたものだ。ただ、注文を繰り返すと同じものでも仕上がりが変わる(変えてくる)ので、別もの???となってしまい、売る側としては困惑することもしばしば。前の方が良かったとか今の方が良いとか色んな声があるけれど、どうしようもなく通り過ぎていく。ゲゲッと思った瞬間に、そうだよなあ。同じものは出来ないよなあ…と納得もしてしまうのだ。中本さんはやりたい事をたくさん詰め込まず、大事なポイントをひとつ守ると決めているそうだ。例えばリム皿の場合は白い面を綺麗にする。面と面のつなぎ目を綺麗にする。折り紙みたいな言い方をするなあと思いながら、お米みたいにつるんと美人のリム皿を眺めた。今回のは青味も灰味もなく、なんにもない白らしい白だ。つなぎ目とはリム皿の線のことで、二本にすると柔らかい印象になる。

どう生きてきたか、なんてことを山ほど話してきた。以前は土器に憧れて焼き〆一直線。庭には当時焼いた茶色い甕とか鉢なんかがゴロゴロ転がっている。色いろあって今は白磁をしているが、本人は変わらずに土器なるものを焼いているつもりらしい。昔の人が生きていくために焼いた雑器中の雑器であり、交易や社会と繋がる手段でもあった沖縄のパナリ焼みたいなイメージがそこにはある。もはや土器を見て土器を焼かず。土器は白磁でも焼くことが出来るのだと、腑に落ちた。私たちが見ているかたちは実はイメージなのかもしれない。
中本さんは時どき雑誌のスクラップをしている。切り貼りした洋服や雑貨や骨董を指差して「これとこれの要素を組み合わせたい」なんて言う。およそ他人には理解できないが、私もそこから別の点を導いて意味を考えることをする。ものを見れば、分かる。そこになんらかの法則が働いていて、テトリスみたいに思考を組み立てているみたいだ。おおらかに体を動かしながらも、なにかしら数字を感じずにはいられない。

普通で良い、普通が良い、と多くの人が口にする。何のてらいもない、普通のもの。普通ってなんなんでしょう、と聞いてみた。 「普通は未来にある」との答え。普通はいつの時代も時と場合で変わりやすい。すぐに手元に掴むことは出来ない、心の中にあるものだ。あるものを見て閃き、「これで未来の器が作れるかも…」などと口走る中本さんはやや狂気じみているが、私も同じようなことを考えている。
私にとっての普通は、嫌じゃないもの。それは間違いなく自分の中にあるのだが、それが一体なんなのか。生きながら、働きながら、自分と社会と、どう折り合いをつけていくべきか。すべては人、もの、場所が表してくれる気がしている。皆さんの普通ってなんですか?中本さんによると、そんなことばかり考えている私も土器的生活推進研究員になれると。ヤッター! 時間切れ。「展示会のことですが、とりあえず、いつも通りに作っておいてください」として帰った。どうせ同じものは出来ないのですから。店をはじめて、中本さんと会って10年が経った。時代はますます乱世であるが、そんな中でも相変わらず、我われは未来のことを夢見つづけている。


関連イベント - Ottè beginning -
京都・物集女(もずめ)にて開業準備中の”Ottè”(オッテ)。薪窯のpizza、菓子、エスプレッソがメインのカフェです。

オーナーご夫婦はKitの10年来のお客さまであり、中本純也ファンでもあります。
そんなお二人が中本純也展に合わせて、2日間だけ出張喫茶してくれます。

これまでは自分たちのためにエスプレッソや菓子を愉しんできたお二人。まずはストレッチということで、ここから始まります。どうぞお楽しみに。

日程:
9.10(土)ー11(日)
各日
①12:30-13:30
②14:30-15:30
③16:30-17:30

メニュー:
エスプレッソとイタリア菓子”カンノーリ”
¥1,300

カンノーリはシチリアの揚げ菓子。今回はリコッタチーズをベースにしたクリームを巻いてチョコレートや果物をトッピングします。コーヒーはエスプレッソ、カップチーノ、アメリカーノからお選びいただきます。

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