作家在廊:1.30(金)〜2.17(火)
水木定休
どうやら時間は直線的に流れてはいないらしい。ときどき、そんな時間と戯れてみる。いつもより早起きをして、無目的に見知らぬ土地に移動する。数時間後にはどこかしらの場所に降り立つことができるし、唐突に体をポーンと放り出して、初めての景色に出合うのだ。ローカルバスに揺られて行けるところまで行ったり、ご当地グルメをハシゴしたりして、なんとかその日中に帰り、いつもと同じ時間帯にはベッドに入っている。まるで無かったかのような1日を振り返ると、劇的なことは起こらないのだが印象的な場面は2つ、3つと断片的に浮かんでくる。そういう日は時間をワープするかのような大移動をしたせいか、肉体に負荷がかかり、とても消耗してしまう。時空を圧縮したんだから仕方ない…そんなことを思いながら、深い眠りにつく。
2025年に月刊原田教正(Monthly Kazumasa Harada)と称して、習作を発表していただいた。静物、人物、風景などの被写体を等しく扱い、淡々と目の前の現象を捉えている。作品とそれに添えられた小文も”かたち”であり、その写真と言葉は似ているように思えた。再び光を通して、私は写真が内包する時間を見ている。小さく切り取られた四角のなかに、細切れで、並べ替えられ、圧縮された、あの懐かしい時間を思い出さずにはいられないのだ。
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2023年9月、ベルリンに渡った。
それは、写真と叙情の癒着について改めて問うことに始まり、物事はどのように存在し、変遷しているのか、その客観的な事実と断面を深く観察・考察したいとの思いからだった。
私たちの生きている時間は、本当に線のような形状で続いているのだろうか。全く異なる出来事の断面が、無意識のうちに数珠繋ぎになっているだけだとしたなら、写真はそれらを分解できる極めて興味深い装置と言えるだろう。
本展示では、2025年1月からKit onlineで”Monthly Kazumasa Harada”として連載した作品を発展させ、散文のような形で展示いたします。昨年9月には正式にベルリンに居を移し本格的にドイツと日本を往来する生活となるなか、一貫して続いてきた写真を巡る思考の軌跡と対話の断片を、ご覧いただけますと幸いです。
ー 原田教正
略歴)
原田教正 | Kazumasa Harada
1992年東京生まれ。2016年に武蔵野美術大学映像学科卒業後はコマーシャルフォトグラファーとして活動する傍ら、積極的に展覧会や写真集の制作を続けてきた。2020年には初の写真集『Water Memory』を刊行し、その後『An Anticipation』『Obscure Fruits』などを刊行。2023年にはベルリンでの滞在制作を経て『時間の園丁』(南青山information)での展示や写真集『My origin photographs』を新たに刊行。2025年9月から本格的に制作拠点をベルリンに移す。
