作家在廊:10(土)〜12(月)
会期中無休
四時
亜沙子さんと出合ってかれこれ十年以上が経った。LINEで何気ない日々の出来事、愚痴を聞いてもらうことは日常のひとつであり、それが同じ調子で続いていることに驚いてしまう。大なり小なり事件は起こるのだが、月日が過ぎてみると何も変わっていないような気もするのだ。相変わらず亜沙子さんは夫婦で営む喫茶店の運営に忙しく、制作は営業を終えた真夜中にはじまる。しんと静まりかえった世界で、深い夜の灯りの下で進んでいく。「不工」「無丘」など繰り返し書くことば、数にまつわることばが多い。例えば、「四時」には春夏秋冬……一年を成す四つの時、という意味がある。儚くも、強く立とうとする「四時」の二文字にさまざまな思いがめぐる。これは昨日今日のことではない。肉体化された時間が刻んだ線だと私は思っているから。
そして、午前四時のはなし。時計の針が四を指すころ、夜はまだ終わっていないが朝はすでに始まっている。人の気配がほぼ止まっている一方で、空はまだ暗くても、太陽は地平線の下から空を照らしはじめる。私は夜とも朝ともどちらとも言えない、ほんの少しばかりのこの時間が好きだ。何かが見える気がするし、起こる気がするのだ。実体はないが予感はする、という希望。だから我われが目指すべきは、四時なのである。
略歴)
池多亜沙子 / Asako IKEDA
金沢市出身。幼少より書を始める。臨書をライフワークとし、古典をベースとした作品を制作。韓国・ソウルに拠点を置き「雨乃日珈琲店」を運営しながら、個展やグループ展で作品を発表。店舗ロゴや書籍タイトルなども手がける。

