原田教正
A slice of time

2026/01/29

2026.1.30(金)〜2.17(火)
作家在廊:1.30(金)〜2.17(火)
水木定休

どうやら時間は直線的に流れてはいないらしい。ときどき、そんな時間と戯れてみる。いつもより早起きをして、無目的に見知らぬ土地に移動する。数時間後にはどこかしらの場所に降り立つことができるし、唐突に体をポーンと放り出して、初めての景色に出合うのだ。ローカルバスに揺られて行けるところまで行ったり、ご当地グルメをハシゴしたりして、なんとかその日中に帰り、いつもと同じ時間帯にはベッドに入っている。まるで無かったかのような1日を振り返ると、劇的なことは起こらないのだが印象的な場面は2つ、3つと断片的に浮かんでくる。そういう日は時間をワープするかのような大移動をしたせいか、肉体に負荷がかかり、とても消耗してしまう。時空を圧縮したんだから仕方ない…そんなことを思いながら、深い眠りにつく。

2025年に月刊原田教正(Monthly Kazumasa Harada)と称して、習作を発表していただいた。静物、人物、風景などの被写体を等しく扱い、淡々と目の前の現象を捉えている。作品とそれに添えられた小文も”かたち”であり、その写真と言葉は似ているように思えた。再び光を通して、私は写真が内包する時間を見ている。小さく切り取られた四角のなかに、細切れで、並べ替えられ、圧縮された、あの懐かしい時間を思い出さずにはいられないのだ。




2023年9月、ベルリンに渡った。
それは、写真と叙情の癒着について改めて問うことに始まり、物事はどのように存在し、変遷しているのか、その客観的な事実と断面を深く観察・考察したいとの思いからだった。
私たちの生きている時間は、本当に線のような形状で続いているのだろうか。全く異なる出来事の断面が、無意識のうちに数珠繋ぎになっているだけだとしたなら、写真はそれらを分解できる極めて興味深い装置と言えるだろう。
本展示では、2025年1月からKit onlineで”Monthly Kazumasa Harada”として連載した作品を発展させ、散文のような形で展示いたします。昨年9月には正式にベルリンに居を移し本格的にドイツと日本を往来する生活となるなか、一貫して続いてきた写真を巡る思考の軌跡と対話の断片を、ご覧いただけますと幸いです。


ー 原田教正


略歴)
原田教正 | Kazumasa Harada
1992年東京生まれ。2016年に武蔵野美術大学映像学科卒業後はコマーシャルフォトグラファーとして活動する傍ら、積極的に展覧会や写真集の制作を続けてきた。2020年には初の写真集『Water Memory』を刊行し、その後『An Anticipation』『Obscure Fruits』などを刊行。2023年にはベルリンでの滞在制作を経て『時間の園丁』(南青山information)での展示や写真集『My origin photographs』を新たに刊行。2025年9月から本格的に制作拠点をベルリンに移す。

https://www.kazumasaharada.com

大滝郁美
väv – Vinter
織 - 冬

2025/11/09

2025.12.6(土)〜16(火)
作家在廊:6(土)
会期中無休

väv(ヴェーヴ)はスウェーデン語で「織る」の意味。今年はカシミヤの単糸を使い、より薄く・軽やかに仕上げた正方形のスカーフサイズを織っていただいた。とにかくこのサイズは便利。室内でもシルクスカーフのようにクルクルっと巻く。ハンカチのようにクシャクシャっとポケットに仕舞う。もっと寒い時は、大判のストールと重ね付けしても良いだろう。凍てつく冬のなか、太陽の光のように明るく射す色を織る。スウェーデンで染織物を学んだ大滝さんならではの大胆な色の取り合せ、複雑な図案が目を惹く。

イエローを基調として、さまざまなラインが走るスカーフには35のパターンが織り込まれている。もともとサンプルとしてリネンで意図せず織られた、素材の欠片だったが、私にはキラキラと魅力的に映った。既にそこに存在する、ありのままを風景にしてもらい、結果的には細やかなテクニックを盛り込んだ、贅沢な1枚となった。

相変わらず、ほとんどの糸を自身で染めている。例えばイエローという色にもグラデーションがあり、この場合は青みを感じるレモンのようなイエローだ。小さいが、スカーフの顔をしたテキスタイル-väv-の醍醐味を大いに感じる。それは色、手触り、温もりといった感覚的に好きな要素と要素をギュッと建築学的に詰め合わせにした、とてもハッピーなセットなのだ。

略歴)
大滝郁美(Ikumi OTAKI)
山形県出身。スウェーデン、ダーラナ地方にある手工芸学校で3年間、現地の文化や自然の中で大切に受け継がれてきた、伝統的な織物や手工芸を学ぶ。
https://itori-vav.com

石原真理
Mari KNITTING

2025/11/07

会期:2025.11.15(土)〜11.25(火)
作家在廊:15(土)
会期中無休

真理・編みもの。確か、数年前も自動的にこのタイトルを付けた記憶がある。そう並べて記したくなるくらい、季節を問わずに編んでいるそうだから。金木犀が終わり、台湾椿が咲き始めた。冬の到来を感じていたところ、久しぶりにセーラーウォーマー、手袋、マフラーなどが届く。早く正しく美しくつくられた既製品に慣れ親しんでいる私だけれど、この手編みはそんな洋服にもよく似合う。どこか分からないが異国的な色、懐かしいかたち、ふっくらと空気を含んだ、手編みならではのこの感触。人の温度を通して作品は完成する、という真理さんの言葉があるが、まさしく。遠くて温かい記憶を手繰り寄せていると、子どもの時に好きだった絵本を久しぶりに開いた日のことを思い出した。寒い冬の中にある温度は、温かな感情を紡いでいくから好きなのだ。

大矢拓郎
S・F盆 展

2025/10/05

会期:2025.11.1(土)〜18(火)
作家在廊:1(土)、2(日)
会期中無休

ふらりと訪れてくれたのは5年くらい前。小さな我谷盆や拭き漆のお盆など、手刳りの作品をいろいろ持って来てくれたことを思い出す。例えるならば、どこかの古民芸店に入って偶然に見つけたような、無記名の木工品みたいだった。いま現在つくっているものが、背伸びしすぎず等身大の姿に近い気がして、自然とやり取りが始まった。

我谷盆のような、木の塊にぶつかっていくような仕事を好み、荒彫りをしたあとカンナやノミを使う。「駄作でも、たくさん手を動かしていた方が良い」と言うだけあって、これまで多くの習作を見てきた。そんな中から、大胆なノミ目が気持ち良い隅丸重箱、紙箱のような名刺入れなど、やはり古物のような佇まいの、しかし独創的な作品が生まれていると思う。

我谷盆に憧れて木工の道に入ったという事もあって、原点である手刳盆に力を入れているのだが、特に印象的な作品を二つ。一つはノミ目が破壊的に素晴らしい、松の讃岐盆。時間とともに、松脂が全体的に馴染んで艶が出てくる。もう一つは生漆(きうるし)仕上げの栃の藤原盆。拭き漆以上・溜め塗り未満で、木目を生かさず殺さず、うっすらと奥に木目を感じる程度に塗り重ねて黒漆の佇まいに近づけている。古いもの、美しいものへの憧れ ー その眼差しがうつし変える新しい色かたち。時代や地域は異なるが、木をかたちづくる感触自体は今も昔も同じであり、手で削った感覚を大事にしている。ただし忠実なトレースではない、念の為。ということで、それぞれS盆、F盆と記号的に表記していくことにした。



略歴)
大矢拓郎 / Takuro OYA
1986年 誕生
2012年 京都伝統工芸大学校木工芸専攻卒
2012年 佃眞吾に弟子入り
2018年 亀岡にて独立

Photo:Kazumasa HARADA

2025年下半期スケジュール

2025/09/04

7月19日(土)ー29日(火)壷田和宏・亜矢

8月16日(土)ー26日(火)柴田有紀

9月13日(土)ー23日(火)MAISON GRAIN D'AILE

10月11日(土)ー21日(火)黒畑日佐代

11月8日(土)ー12月2日(火)大矢拓郎

11月15日(土)ー25日(火)石原真理

12月6日(土)ー16日(火)大滝郁美


展示の規模は大小いろいろです。
予定は変更になる可能性があります。事前にweb site、SNSをご確認のうえご来店いただきますようお願い致します。

展示会の詳細はこちらのHPで随時ご案内しております。

MAISON GRAIN D'AILE
l’ Art Japonais / ラールジャポネ
- ジャポネの骨董と西洋のエッセンス -

2025/09/01

会期:2025.9.13(土)〜23(火)
作家在廊:13(日)
会期中無休

はじめてMAISON GRAIN D’AILEの扉を開けたのは、2000年代半ばの頃だと思う。神戸の古いビルディング内にある小さな一室に、フランスで買い付けられた古くて美しいものが並べられていた。そこに広がっていたのは、まさにCabinet de curiosités / キャビネ・ド・キュリオジテ(和訳:驚異の部屋)の世界観であり、部屋の隅に佇んでいた磁器人形のような店主の存在は、作品の一部のように印象に残った。

キャビネ・ド・キュリオジテはルネサンス時代に始まった、剥製、鉱物、植物、昆虫、貝殻、骨など自然物を中心に人工物も分け隔てなく収集した、珍しいものを並べる展示形式で、博物館の原型とも言われる。人工物というところでは、「ユニコーンの角」のような実在しないものの存在が信じられ、本物と称して贋物が陳列されたりしていたそうだ。目に見えないものを見ようとする人間の想像力は、また別次元の新たなものを生み出す。MAISON GRAIN D’AILEが表現する世界には、現在から過去を見る/過去から未来を見るような、不思議な時間軸が出来ていた。フランス、ヨーロッパだけではなくアジア諸国、日本の古物も並列されていて、特に日本のものは逆輸入されたような感覚で対面することになり、そういう意味でも新しく目に映ったものだ。私はそこで初めて古伊万里の白磁猪口をいくつか購入し、今でも愛用している。

大阪・北浜時代を経て、琵琶湖のほとりに建てた住まい・アトリエはギャラリーを暮らしの中に昇華させた場所で、現在も増築・改修工事が続く。開業から25年が経って、フランス現地に買い付けに行くことは少なくなり、改めて日本美術への思いが募っているという。今では私も同業者として二人を訪ね、たびたび対話しているのだが、目下、未来は火星に移住して骨董屋を営んでいるイメージだそうだ。いつか、これぞという品々を抱いて渡り、火星人を驚かせたい、そんな話をしてくれた。ユニコーンの角を思い描いた、先人の夢のようではないか。いつか誰かが見た夢は我われのものでもある。私がずっと感じていたのは、よく形容されるであろう重厚で静謐な世界観ではなく、膨大な量の収集物や時間の重さを突き抜けるような、圧倒的な軽やかさ。火星人が驚くところを一緒に見たい…そんな話をしながら、グランデールとは、浮遊する種子=とても軽い、と言う意味であることを思い出していた。


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2025年9月に25周年を迎えるMAISON GRAIN D’AILE(メゾングランデール)の展示販売を行います。長きに渡ってフランスの古物を中心に収集し、空間をつくり続けている二人。その経験、知識、目を通して、日本の古物が持つ美しさに焦点を充てた展示になります。


略歴)
MAISON GRAIN D'AILE
Shinsaku HARADA, Maki HARADA

2000年
メゾングランデールとして活動を始める。主にフランスを中心に世界中から美しい・古いものを収集しコレクション展を発表。当初から表現してきた、貝や鉱石・標本などキャビネ・ド・キュリオジテやシュールレアリスムなどの要素を含む古美術の世界を制限した色彩・物語性のある構成を用いて独自のスタイルで確立

2015年
住まいとアトリエを琵琶湖のほとりに移し、MAISON GRAIN D'AILE の家をデザイン・建築。

大阪・北浜にて、より本質的なオブジェを紹介するGALERIE AU BOIS - ギャルリ・オーボワを2018年12月末まで運営したのち、現在はオンラインストアにて販売を続けている。

maisongraindaile.com

photo:Kazumasa Harada

柴田有紀 展

2025/08/02

会期:2025.8.16(土)〜26(火)
作家在廊:17(日)
会期中無休

まだ武蔵美で助手として働いている柴田有紀さんに会いに行ったのは、3月だった。様子を伺いつつ、なんとなく今年の方向性を話す。とりあえず何かを掴もうと手ぶらで行って、抽象的な話で終わってしまうことが多いのだが、この日もそうだった。具体的にかたちとなって一つ二つと便りがあると、ようやく調子が出てくるはずが、歯車がなかなか合わず、更に予定外のこともあって気付けば8月。DM用の写真も撮影できないまま計画が狂いに狂って、会期が一週間遅れてしまった。

そんな中でも明日また初日を迎える。ギリギリ滑り込みで届いた作品は、前回よりもっと磨かれて、新しく、素直な柴田さんらしいかたちばかりだった。奇跡的なタイミングで二度に渡り写真に収めていただくことも出来て、こうなったらこの瞬間も撮ってもらいたかったなー、と切ないほど。ピースはバラバラだったものの、最後にはちゃんと合った。それぞれが似合うような場所をつくりながら、探しものが見つかったような気分だった。


吹きガラスとパート・ド・ヴェールの作品がある。ガラス粉末を石膏型の中で熔融して成型するパート・ド・ヴェールの作品に、美学生が練習で描く静物画のような佇まいを感じていた。型づくりに関しては、身近に既にあるものを型に取る、吹きガラスで制作したものを型に取る、粘土でかたち作ったものを型に取る、などの方法を取っているが、直接ガラスという素材を手で触れることが出来ない吹きガラスに対して、パート・ド・ヴェール作品はもっと自分らしい”かたち”に向き合っているような気がしていた。今回は、そのパート・ド・ヴェールで取り組んでいるような彫刻的なかたちを、吹きガラスに持ち込んでいただいた。

二つの技法で、柴田さんらしい、でも新しいかたちが引き出されたと思う。直前まで色んなことを話したが、キーワードは”静物画”だった。

photo:Kazumasa Harada

IG X
© SANKAKUHA inc.