2025年下半期スケジュール

2025/09/04

7月19日(土)ー29日(火)壷田和宏・亜矢

8月16日(土)ー26日(火)柴田有紀

9月13日(土)ー23日(火)MAISON GRAIN D'AILE

10月11日(土)ー21日(火)黒畑日佐代

11月1日(土)ー11日(火)大矢拓郎

11月15日(土)ー25日(火)石原真理

12月6日(土)ー16日(火)大滝郁美


展示の規模は大小いろいろです。
予定は変更になる可能性があります。事前にweb site、SNSをご確認のうえご来店いただきますようお願い致します。

展示会の詳細はこちらのHPで随時ご案内しております。

MAISON GRAIN D'AILE
l’ Art Japonais / ラールジャポネ
- ジャポネの骨董と西洋のエッセンス -

2025/09/01

会期:2025.9.13(土)〜23(火)
作家在廊:13(日)
会期中無休

はじめてMAISON GRAIN D’AILEの扉を開けたのは、2000年代半ばの頃だと思う。神戸の古いビルディング内にある小さな一室に、フランスで買い付けられた古くて美しいものが並べられていた。そこに広がっていたのは、まさにCabinet de curiosités / キャビネ・ド・キュリオジテ(和訳:驚異の部屋)の世界観であり、部屋の隅に佇んでいた磁器人形のような店主の存在は、作品の一部のように印象に残った。

キャビネ・ド・キュリオジテはルネサンス時代に始まった、剥製、鉱物、植物、昆虫、貝殻、骨など自然物を中心に人工物も分け隔てなく収集した、珍しいものを並べる展示形式で、博物館の原型とも言われる。人工物というところでは、「ユニコーンの角」のような実在しないものの存在が信じられ、本物と称して贋物が陳列されたりしていたそうだ。目に見えないものを見ようとする人間の想像力は、また別次元の新たなものを生み出す。MAISON GRAIN D’AILEが表現する世界には、現在から過去を見る/過去から未来を見るような、不思議な時間軸が出来ていた。フランス、ヨーロッパだけではなくアジア諸国、日本の古物も並列されていて、特に日本のものは逆輸入されたような感覚で対面することになり、そういう意味でも新しく目に映ったものだ。私はそこで初めて古伊万里の白磁猪口をいくつか購入し、今でも愛用している。

大阪・北浜時代を経て、琵琶湖のほとりに建てた住まい・アトリエはギャラリーを暮らしの中に昇華させた場所で、現在も増築・改修工事が続く。開業から25年が経って、フランス現地に買い付けに行くことは少なくなり、改めて日本美術への思いが募っているという。今では私も同業者として二人を訪ね、たびたび対話しているのだが、目下、未来は火星に移住して骨董屋を営んでいるイメージだそうだ。いつか、これぞという品々を抱いて渡り、火星人を驚かせたい、そんな話をしてくれた。ユニコーンの角を思い描いた、先人の夢のようではないか。いつか誰かが見た夢は我われのものでもある。私がずっと感じていたのは、よく形容されるであろう重厚で静謐な世界観ではなく、膨大な量の収集物や時間の重さを突き抜けるような、圧倒的な軽やかさ。火星人が驚くところを一緒に見たい…そんな話をしながら、グランデールとは、浮遊する種子=とても軽い、と言う意味であることを思い出していた。


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2025年9月に25周年を迎えるMAISON GRAIN D’AILE(メゾングランデール)の展示販売を行います。長きに渡ってフランスの古物を中心に収集し、空間をつくり続けている二人。その経験、知識、目を通して、日本の古物が持つ美しさに焦点を充てた展示になります。


略歴)
MAISON GRAIN D'AILE
Shinsaku HARADA, Maki HARADA

2000年
メゾングランデールとして活動を始める。主にフランスを中心に世界中から美しい・古いものを収集しコレクション展を発表。当初から表現してきた、貝や鉱石・標本などキャビネ・ド・キュリオジテやシュールレアリスムなどの要素を含む古美術の世界を制限した色彩・物語性のある構成を用いて独自のスタイルで確立

2015年
住まいとアトリエを琵琶湖のほとりに移し、MAISON GRAIN D'AILE の家をデザイン・建築。

大阪・北浜にて、より本質的なオブジェを紹介するGALERIE AU BOIS - ギャルリ・オーボワを2018年12月末まで運営したのち、現在はオンラインストアにて販売を続けている。

maisongraindaile.com

photo:Kazumasa Harada

柴田有紀 展

2025/08/02

会期:2025.8.16(土)〜26(火)
作家在廊:17(日)
会期中無休

まだ武蔵美で助手として働いている柴田有紀さんに会いに行ったのは、3月だった。様子を伺いつつ、なんとなく今年の方向性を話す。とりあえず何かを掴もうと手ぶらで行って、抽象的な話で終わってしまうことが多いのだが、この日もそうだった。具体的にかたちとなって一つ二つと便りがあると、ようやく調子が出てくるはずが、歯車がなかなか合わず、更に予定外のこともあって気付けば8月。DM用の写真も撮影できないまま計画が狂いに狂って、会期が一週間遅れてしまった。

そんな中でも明日また初日を迎える。ギリギリ滑り込みで届いた作品は、前回よりもっと磨かれて、新しく、素直な柴田さんらしいかたちばかりだった。奇跡的なタイミングで二度に渡り写真に収めていただくことも出来て、こうなったらこの瞬間も撮ってもらいたかったなー、と切ないほど。ピースはバラバラだったものの、最後にはちゃんと合った。それぞれが似合うような場所をつくりながら、探しものが見つかったような気分だった。


吹きガラスとパート・ド・ヴェールの作品がある。ガラス粉末を石膏型の中で熔融して成型するパート・ド・ヴェールの作品に、美学生が練習で描く静物画のような佇まいを感じていた。型づくりに関しては、身近に既にあるものを型に取る、吹きガラスで制作したものを型に取る、粘土でかたち作ったものを型に取る、などの方法を取っているが、直接ガラスという素材を手で触れることが出来ない吹きガラスに対して、パート・ド・ヴェール作品はもっと自分らしい”かたち”に向き合っているような気がしていた。今回は、そのパート・ド・ヴェールで取り組んでいるような彫刻的なかたちを、吹きガラスに持ち込んでいただいた。

二つの技法で、柴田さんらしい、でも新しいかたちが引き出されたと思う。直前まで色んなことを話したが、キーワードは”静物画”だった。

photo:Kazumasa Harada

壷田和宏 亜矢 ー 続 炭化焼き〆

2025/07/03

会期:2025.7.19(土)〜7.29(火)
作家在廊:19(土)
会期中無休


熱量で焼く土のかたち

窯の中の酸素を奪い、高い温度・熱量を与えて焼き〆る、炭化焼き〆。2022年の展示では穴窯で焼くこの技法を中心に制作をしていただいた。壷田和宏・亜矢さんの表現方法は多岐に渡り、それぞれ魅力があるが、特に炭化は二人が大切にする土の特性・魅力を最大限に活かせた気がして、いつかまた続きをしたいと思っていた。

むしろ、炭化でしか上手く焼けないという 黒原 くろばる 原土は、 白粉 おしろい のようにキメ細かい土で、自宅の近くで採掘し、粘土にしている。他の土とは混ぜずに原土のまま焼くと、見た目とは真逆の印象的なグレー色になり、温度によってはベージュ・ピンクのグラデーションが付くこともある。この土は緩くて崩れ易く、大きく立ち上げるのが難しい。シンプルなプレートや高台の形状は、これが限界がゆえのかたちだそう。B品の器を鋳型にする方法は、粘土を精製する時にボウルに容れておいた土が、そのフォルムを自然に記憶して器のかたちになった経験から。素材と一緒に並走し、土が気持ち良く姿を留める点を探ったり、その辺りに散らばっている美を見い出し・引き出したりしながら、気持ち良くかたちは決まっていく。

壷田さんから、炭化は温度というより熱量で焼くと教えられ、その言葉が響いた。土に物理的な力を加えて色んな姿に変えているが、それは表面のはなしで、真ん中に感じるのは熱量の働き。見えないその力には日常の決まりごとから解き放たれた、ひと時の完全なる自由がパッケージされている。


略歴)

壷田和宏 亜矢 / Kazuhiro , Aya TSUBOTA

1972年
和宏 三重県伊賀市に生まれる
亜矢 愛知県安城市に生まれる
1995年 愛知県芸術大学陶磁器専攻科卒
愛知県長久手市に登窯を築窯
2000年
三重県伊賀市融栗谷に穴窯築窯
2009年
宮崎県高千穂五ヶ所に登窯築窯
2011年
同地に穴窯を築窯






黒原原土

この立ち上がりがギリギリだというプレート

成形している間にも崩れやすい、ゆるゆるの土

失敗した作品が鋳型になる

「底が可愛くなった♡」と喜ぶ壷田さん


登り窯で焼く

前回と今回で違う点がひとつ。本来の炭化は穴窯で焼くところ、今回は工夫して登り窯を使う。理由は2年前に穴窯が壊れてから、新たに作り直す余裕が無かったから。3つある部屋のうち、一番奥の大きな部屋で炭化焼き〆を、残りの部屋では炭化以外の焼き〆・釉薬ものを焼く予定。

天草白磁にガラスを混ぜたものが面白く出来そう、とテストピースを見せていただいた。グリーンがかったグレーとでも言うべきか、何とも表しがたい中間色で、感覚的に良いなと思った。よりプレーンな表情になるようにブレンドして登り窯で焼き〆たら、炭化の有/無でどのような違いが生まれるのかを対比してみたい。

こちらは登り窯で焼いたテストピース

2025年上半期スケジュール

2025/05/14

1月4日(土)ー14日(火) 植田楽(終了)

3月22日(土)ー4月1日(火) moshimoshi(終了)

4月12日(土)ー22日(火) iroiro(終了)

5月3日(土)ー13日(火) FAT TOY + オカモトマナブ(終了)

6月7日(土)ー17日(火) 小松未季(終了)


展示の規模は大小いろいろです。
予定は変更になる可能性があります。事前にweb site、SNSをご確認のうえご来店いただきますようお願い致します。

展示会の詳細はこちらのHPで随時ご案内しております。

小松未季

2025/05/13

会期:2025.6.7(土)〜6.17(火)
作家在廊:7(土)
会期中無休

過日、小松さんからLINEが届いた。ポンポンポンと流れてきた複数枚の写真はざらざらっとしていて、砂漠のように見えた。続けてメッセージには、こうあった。


「近況報告です。空気を作ろうと思ったら、海みたいになりました。空気を閉じ込めようと思っていましたがこれはこれで…」


それは大きな作品で、板ガラスに別の素材を合わせ、焼いて、一つにする。ガラスとの間に異物があると部分的に膨らみが生じて、中に空洞が出来る。波のようでもあり、確かに、平らな面が広ければ広いほど海みたいだ。近づいて見ると視界は粗い粒子でいっぱいになり、終いには何も見えなくなる。そこには、一人で訪れた穏やかな海の世界が広がっている。

小松さんの小さな作業場にはストックされた素材が雑然と、でも大事そうに並んでいる。板ガラス、割れた蛍光灯、ビー玉、ネジ、砂、粘土細工。自身が制作したものもあるが、ほとんどが棄てられていたもので、何が、いつ、作品のピースとして召喚されるのかは分からないが、失敗した過去の制作物も素材として大事に取ってあるそうだ。ガラスにガラス、または異素材を合わせて熱を加えると、どうなるのか。

1.割れる
2.時間をかけて割れる
3.一つになる

この実験は素材同士が受け入れあってこそ成功と言えそうだが、内包しても、相反して割れても、「泣き笑い」と表現し、どちらも自然な姿だと捉えている。学生時代に吹いて、数年後に真っ二つに割れたというガラス鉢も素材としてきちんと置かれていた。ガラスはただ美しいだけではなく脆い存在だからこそ、魅力的なのだ。

小松さんとは昨年に私が参加した、松本での小さなグループイベントで出会った。その時に展示されていた『呼気』は最初に吹いた息のかたち・空気をガラスに閉じ込めた小作品で、時に自分自身が素材の一つとして寄り添うこともある。私は隣で、ただ素材と素材を組み合わせて並べるというディスプレイをすることにしたのだが、作品と作家との間に少し距離がある点に親近感を覚えた。ある程度のところで手放し、現象としてかたちを留めた作品は、表現のために素材を利用していないように感じて気持ちが良かったのだ。気が付くと、自分の搬入作業を後回しにして…キラキラした繊細な欠片たちが一番似合うであろう、居場所を彼女と一緒に探していた。


略歴)
小松未季

1997年京都府生まれ
6歳より神奈川県藤沢市で育つ。
2022年武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科ガラス専攻卒業
2024年同校大学院造形研究科修士課程美術専攻彫刻コース修了


photo:Kazumasa HARADA

FAT TOY + オカモトマナブ

2025/03/12

会期:2025.5.3(土)〜5.13(火)
作家在廊:3(土)

コアラー星人、ギョロペシ、パブリシャスにオバケ戦車…UV、ウレタンレジンなど近所で入手可能かつ安価な素材と道具を使い、大人の頭脳と子どもゴコロで製造された複製可能な手工業的おもちゃ。


ユメ〜〜〜 ⭐️🌕☀️🌈✨


ェリービーンのような色とりどりの粒粒・キラキラは子どもの頃に降ってきた夢そのもの。それは体に悪そうで美味しそうな魔の魅力。キン消しや20円ガチャに閉じ込められた小さな玩具など、かつて駄菓子屋で大量生産・大量販売され、ザツだったりパクリだからこそ自由奔放でユメいっぱいだった駄玩具をルーツに、FAT TOYが自ら再生産した作品です。版権という概念を無視した駄玩具を更なるパクリで超えてTOKIMEKIをこの手に再び。幼い頃に抱いた憧れの記憶を紐とき、大人になってしまったことを少しリグレットしながらユメをここに販売します。


今回は古物商のオカモトマナブさんにFAT TOYの展示装置をつくっていただきます。素材はちょっと古い日本の照明器具が中心。余計なものを剥いだり、パーツとパーツを組み合わせて構成する新しい照明のかたちは玩具、ロボを思わせます。FAT氏によるとロボットアニメの世界で描かれる熱い友情も制作のテーマになっているとか。とことん遊ぶ大人の無法地帯・遊園地をここにつくり、合体して欲しいと思います。


略歴)
FAT
FAT TOY主催者。
1978生まれ。NYハンターカレッジにて油絵専攻BFA取得。 現在は鍼灸院を営む傍ら普無の彼岸を超え自律に則った幸せの形を追求 、制作する。


オカモトマナブ(Manabu OKAMOTO)
1978年 滋賀県甲賀郡士山町に双子の次男として生まれる。
2010年 一般企業を退職。
同年『rust +antiques』の屋号で古物商としての活動を開始。
国内の様々なイベントに参加。多くの古物商と交流を持つ。
2020年 滋賀県大津市にて骨董店『古物 至る』を開業。
2024年 オカモトマナブ名義で照明に特化した活動を開始。
日々、〝新たな骨董〟及び〝物の価値〟を模索。

iroiro 2025

2025/03/11

会期:2025.4.12(土)〜4.22(火)
作家在廊:12(土)

今年もiroiroの販売をさせていただきます。タイで見つけた素材で現地の職人が仕立てた洋服が中心です。相変わらず制服かのように着倒しているシルク、高密度コットン、カシミヤウールなどの洋服、デザイナーの小阪靖子さんがタイに滞在しながら制作する期間中に見つけられた雑貨なども並びます。

去年2月にタイ・チェンマイで小阪さんと合流しました。図らずも20数年前に訪れたチェンマイも同じく2月でしたが、この時期特有の気候や光をよく思い出しています。日差しが強くなる日中は汗をかきながらフルーツや水分をたくさん摂り、肌寒くなる朝晩はノースリーブの上からシルクのロングコートを着てうろうろ動き回っていました。素肌に触れる優しく暖かいシルクの感触とともに記憶が蘇ってきます。滞在中に敏感に感じられる発見や湧き立つ好奇心、それが旅の醍醐味ですがそれを日常にうつすのが私の理想です。毎日あの時のような光を感じていたい。iroiroの色や素材に体を通すたびに、そんなことを思います。


photo:Yasuko KOSAKA

moshimoshi

2025/03/10

会期:2025.3.22(土)〜4.1(火)
作家在廊:未定

自然光いっぱいの白い部屋の天井から、小さな小さな毛のかたまり…モフモフたちが降りてくる。20年くらい前に偶然入ったその場所で、不思議な群れに遭遇した。吊るされたモフモフを下からめくって見ると目が付いていて、猫のような小さな生きものだった。すぐになびいて問い合わせしたものの、非売とのこと。欲しかったペットが家に来ない、そんな淋しい気持ちになり家に帰った。

それから10年が経ったある夜、私たちは暗闇で再会する。古い一軒家の急な階段を上がった畳の間に放たれて、月夜に照らされた謎の生きものが目をギラギラさせていた。ゆっくり体を回したり、おうむ返しでお喋りをする子、不気味な音色に合わせて動く子もいる。函の「まわして下さい」という貼り紙に従って、手巻きオルゴールを回すと大きな音とともにモフモフが飛び出したから、驚きのあまり落としてしまった。それは心臓に負担を感じるほどだったが、ショックとともにじわじわ笑みが溢れ出た。痛みが甘く溶けていくような感情、それは何かに似ている。惚れた。あれから更に10年経ったけれど、恋愛のようにまだこの子たちを追いかけている。


略歴)
moshimoshi

photo:Shingo HIKIAMI

植田楽

2024/12/02

会期:2025.1.4(土)〜14(火)
作家在廊:4(土)、5(日)

紙、セロハンテープ、マジックでつくられた恐竜、生き物たち。パーツごと肉付けして組み立てる、楽君なりのリアルを追求した作品です。今回は特に好きだという中生代の恐竜に焦点をあてましたが、なかには当時珍しかった哺乳類や架空動物も登場します。
色もかたちも何もかも、果たしてどれがリアルでファンタジーなのか?答えのないイメージを再構築して共有するロマン。私はその世界に過去というよりは、遥かなる未来を想うのです。

略歴)
植田楽 Hiraku UEDA
1993年京都生まれ。
京都嵯峨美術大学現代アート領域専攻科卒。
約20年間、紙とセロハンテープで、主に動物や恐竜をモチーフに制作。
https://ueda-hiraku.com/

photo:Shingo HIKIAMI

hou homespun

2024/11/18

会期:2024.12.7(土)〜10(火)
作家在廊:7(土)、8(日)

一年を通して行われるホームスパン※の仕事は種まきから収穫までを一人でするようなものだ。羊の原毛をそのまま使うこともあるが、ほとんどは染色し、糸を紡ぎ、織り、縮絨する。マフラーは冬に向かって仕上げていくが、夏にしか染められない色もあるという。染色や紡ぎを施した羊毛は素材として準備されるが、一旦もしくは数年のあいだ寝かされることもあり、それらは小さな素材の欠片として次の出番を待つ。

2024年はこれまでも何度かテーマになった”イギリス”にピントを合わせている。例えばグレーけむるロンドンの雨空を思い出すツイード、ミルクティーのように甘いウェルシュブランケットのカントリーなチェック。ホームスパンの本場であり、スコットランド、アイルランドにも及ぶ伝統的な毛織物の渋さ甘さは永遠に魅力的だ。上杉さんと一緒に苺のイートンメスを食べたのは4月のことだった。名門イートン校の生徒がママの持たせたお菓子を鞄の中でめちゃくちゃ(=メス)にしてしまった、というのがお菓子の由来だそう。あの時にザクザクとスプーンで割りながら食べた赤と白のお菓子はツイード(房付き)に姿を変えた。鮮やかな春が欠片を繋ぎ合わせて、ここに世界は組まれたのだ.


※ホームスパン
home(家)spun(紡ぐ)の名の通り、家畜である羊の毛を刈り取り、その原毛を自宅用に紡いで織ったことがはじまりとされる。糸を織ると1枚の布になるが、ホームスパンの場合は織ってから縮絨することによって更に繊維が空気を含み、ふっくらと起き上がる。


略歴)
上杉浩子 UESUGI Hiroko
旅行や暮らしにまつわる雑誌・書籍の編集/ライターとして活動する傍ら、2006年より東京・清野工房にて清野詳子氏に師事。ホームスパンを学ぶ。2010年恵文社一乗寺店ミニギャラリーにて初個展。以来、場所をKitにうつし、年に一度のペースでホームスパン作品の展示会を行う。

www.hou-homespun.com


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“イギリス”をテーマにして同時に販売いたします。

LO(キャンドル)→●
IG:lo.studios.japan

黒田益朗(季節の寄せ植え)→●
IG:kurodadesign

TEA & TREATS(菓子、紅茶)→●
IG:tea_and_treats_


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TEA & TREATSのイートメンスとキャンベルズパーフェクトティーをお召し上がりいただけます。
12.7(土)
12:00-18:00
¥1,800

①12:00 - 13:00
②13:15 - 14:15
③14:30 - 15:30
④15:45 - 16:45
⑤17:00 - 18:00


要予約です。お申し込みはこちらから→●

photo:Shingo HIKIAMI

eleven 2nd 2024 A/W

会期:2024.11.16(土)〜26(火)
期間中休みなし
作家在廊:16(土)、17(日)

今年もカシミヤ、ヤク、ウール(良質)のニットを販売します。2024年のカラー、新作のほか今年は手編みのニットもたくさん。昭和のニットを思い出すようなデザイン、配色が逆に新しいというこの感覚。メンズに着れるサイズ、巻いたり被るニットもあるからとりあえず来て!

首元にコンパクトに収まるサイズからぐるぐる大判巻きまで、冬らしいボリュームがありながら意外と軽いニットをご用意してお待ちしております。



https://eleven2nd.com/

photo:Shingo HIKIAMI

NO STRAY DOT
引網真吾

2024/09/18

会期:2024.10.12(土)〜29(火)
期間中休みなし
作家在廊:12(土)、13(日)

ある写真展の案内をふと目にして気になった。近づいて見た。写っているのは水辺か空か、写真か絵か、どっちが上で下なのか…これは何だろうか。気付けば熱が入り、青はプール、白はタイル、ピンクは何かのパーツ、多分ここはプールサイドと推理して、翌日にはその写真家に会いに行っていた。ただただ、好きな色の空気だった。

引網さんは大学では美術を専攻し絵を描いていたそうだが、時間をかけて完成に向かう絵画より、瞬間的に投影像を得る写真に惹かれていったという。極力余計なものを写していなくて、それは引き算とも少し違う。人の気配や自然の機微を感じながら捉えた瞬間を、なるべく触らないように、軽やかに圧縮しているように見える。

案内状には、この秋に刊行された『NO STRAY DOT』から、特に好きな二作品を選ばせていただいた。 映画「シザーハンズ」に出てきそうな陽気な家と、自然が織りなすグラデーションが圧倒的に美しい空。人工物と自然。相反するようだが私にとってそこは、とても懐かしくて遠い場所。畏れも憧れも抱きながら手が届かないのは心の中に存在するからだと思う。遠くにある星を眺めているようで実は心の内に近づいていく、誰しもに訪れるそんな普遍的な瞬間を、この作品は保存しようとしているのではないだろうか。



展示では作品および写真集『NO STRAY DOT』を販売致します。



引網真吾 Shingo HIKIAMI
1980年 和歌山生まれ。
カリフォルニア州立大学卒業後、2012年から上田義彦氏アシスタントを経て、フリーランスの写真家として独立。
https://www.shingohikiami.com

photo:Shingo HIKIAMI

柴田有紀 硝子展

2024/08/04

会期:2024.8.10(土)〜20(火)
期間中休みなし
作家在廊:10(土)、11(日)

ここ最近、ついに、自分の子ども世代の方と仕事をすることが増えている。柴田有紀さんもそのうちの一人。まだ武蔵美に在籍し、助手をしながら制作を続けている。試しに使ってみるか、と初めて注文したのはごくごく普通のコップ。持ち応えがあって、口縁の厚みや丸みがちょうど良く気に入った。京都の軟水、それも常温は柔らかくて優しい。そういう繊細な揺らぎにはこういうガラスコップがよく似合う。

好きで使っている、ほとんど特徴の無い昭和初期の吹きガラスとは色かたちも厚みも違うけれど、それを手にした時の気持ちにも似ている。私が思う、突き抜けた普通。突き抜けていたとしたらそれは普通では無いのでは…というハテナが残るが、とにかく余計なものが一切なくて気持ち良い感覚。何もないって自由なんだ。ゆらゆら揺らぎながら平熱のバランスを探っているようにも見えるけれど、その中にうぶな硬い芯みたいなものを感じた。久しぶりにあの昭和のコップを思い出して、この先に私が見たいと思うものが待っている気がした。



柴田有紀 Yuki SHIBATA

1993 神奈川県生まれ
2017 武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科ガラス専攻 卒業
2017 同校 教務補助員
2018 秋田市新屋ガラス工房 勤務
2021〜現在 武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科ガラス専攻 助手



写真:引網真吾

池多亜沙子 書展

2024/05/07

会期:2024.6.15(土)〜25(火)
期間中休みなし
作家在廊:15(土)、16(日)

亜沙子さんには喫茶店経営という、もう一つの仕事がある。
仕込みと接客に追われる日々は壮絶な肉体労働で、筆を持つより店に立つ時間の方が圧倒的に長いという。
くるくる回り続ける生活の中で生まれる言葉や表現方法は大きくも小さくもなく、ただ熱量があって素直だ。

ある夏の日の夕焼けは絶望的な気持ちを帳消しにしてしまうくらい、黒を白に変えるほど、綺麗だった。
その一撃は、心の奥の方にある泉に到達した気がする。それは気持ち良い自然現象。
亜沙子さんの書はなぜかあの日の空を思い出させる。ただ、見れば良いのだ。
泉に水音が響いたら教えて欲しい。そんな話をしてみたい。



池多亜沙子 IKEDA ASAKO

石川県金沢市生まれ。
幼少より書を始める。
2012年に韓国・ソウルに拠点を移し、夫と共に「雨乃日珈琲店」を営む。
日韓を行き来しながら、個展やグループ展などで作品を発表。



写真:引網真吾

Picnika カントリーフォークロア

2024/05/04

会期:2024.5.11(土)〜21(火)
期間中休みなし

土ものの壺や手ぐりの木工品に吹きガラス、アルミやホーローなどの台所道具まで。 おおらかなフォークロアの中に、可愛い目線を持って選ばれたものに焦点をあてたパート2。

作家在廊:11(土)、12(日)

展示会の様子はこちら

Kit 買い付け展 02

2024/03/01

会期:2024.3.9(土)ー19(火)12:00-18:00

私は時どき買い付けをドラゴンクエスト、宝探しゲームに例える。とりあえず出発して、行く先々でtokimeki発動すればそれを手に入れる。持ち金をすべて失い入手出来ないこともあるし、落とし穴やがどういうかたちで現れるか分からず一回止まる、終了、と思いきや間一髪でボーナス救世主が舞い降りギリギリセーフ!そんなことの繰り返し。


2012年にKitを始めることにした。貯金も退職金も無く所持金は最後に貰った給料とボーナスの残り合わせて30万ポイントくらい。そこから色んな人に助けられたり、大迷惑を掛けたりしてスタートした。フライトチケットが安い、G-DRAGONが好き、そんな理由から最初に選んだ海外買い付け先は韓国だった。繰り返し訪れ眺め続けた韓国の中で拾い上げたものは、何の知識も無い私を大いに成長させてくれた。それは経験主義円安や社会情勢の変化といった大人の事情もさることながら自分自身が年齢を重ねて、選び方見せ方も随分と変わってきたように思う。ふと、何の罰ゲームをやらされているのだろう?と思うこともあるが、無いものを探し続ける旅は何度でも新しいに出会う冒険活劇であり、それこそが宝探しであることに気づかされる。そろそろ2、3コマは進めた頃だろうか?何度もこんにちは、さようならを繰り返したここに再び戻ることにした。
アンニョン、韓国。




키트
매입 02
나라: 한국
년: 2024
감사: 아메노히 커피점,김한솔

Kit
BUYING 02
Country:KOREA
Year :2024
Thanks:amenohi coffee,Kim Hansol



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買い付け展 02の買い付け日記はこちら

臼杵春芳 展

2023/12/12

会期:2024.1.6(土)〜16(火)

久しぶりに臼杵春芳さんを訪ねた。先ずはところどころに植えた漆の木をチェック。 知り合いが持つ里山など、了承を得て数カ所に植えているらしく15年~20年で漆が掻けるようになるそうだ。元気に育っているものもあれば病気になった木もある。漆のストックが足りなくて、今年はまだ良いが来年、再来年はどうなるか…そんな話しを聞きながら山道を歩いた。

長らく木地を挽いてくれていたベテラン木地師さんは引退されたから、木地を用意するのにひと苦労していて、ここ2年間で状況は大きく変わっていた。そんな訳で今年は臼杵さん自身が轆轤を挽いた木地もあり、これまた私の好みである。数ものには出せない、ぽってりどっしりしたサイズとかたち。職人技のシャープでバランスの良い木地とはまた違った魅力がある。自然に生まれる漆の縮みや木屑の混入を生かした漆塗りは絵画的で、この漆の重なりこそ臼杵春芳だと思うのだ。

ここに来ると必ず同じうどん屋へ行き、漆の木をチェックし、最近の作品を見せてもらい、侃侃諤諤と話し猫を撫でて帰る。そんないつも通りの定点観測なのだが、確実に日本の漆は無くなりつつあるし、讃岐特有の轆轤を挽く木地師さんもいなくなってしまった。移りゆく時を感じながら、いま出来ることの中でなんとか生まれる作品を楽しみに待つばかりだ。


作家在廊:6(土)、7(日)

臼杵春芳 / USUKI Haruyoshi
1954年生まれ。1977年彫刻家新宮晋氏に師事。京都を拠点に建築家との共同作業で店舗や個人住宅の家具制作を行う。近年は工房を香川へ移し、漆の木の栽培をはじめ、漆掻き、木地師、塗師の一連の工程を一人で行っている。

www.usuki-koubou.com

photo:Shingo HIKIAMI

大滝郁美
väv – Vinter
織 – 冬編

2023/12/07

会期:2023.12.9(土)〜

大滝郁美さんのテキスタイル展。夏編から5年ぶりの開催です。
ルーツとなるスウェーデンはもとより、西欧東欧のフォークロア・テキスタイルから参考を得たカラーやデザインをミックスさせた冬の布を制作していただきました。
“欲しい色はなるべく染める”精神でカシミヤを中心に、糸から紡いだ麻のマットなど、素材と大いに戯れた作品です。
私の大滝郁美ワールドは懐かしくて、暖かいイメージ。言うなれば実家にあったコタツカバー。おばあちゃんの手編みのセーター。時にビター&シックにまとめた布だとしても、私のイメージは陽だまりの暖色。そんなあたたかい作品です。

作家在廊:9日(土)

略歴)
大滝郁美(Ikumi OTAKI)
山形県出身。スウェーデン、ダーラナ地方にある手工芸学校で3年間、現地の文化や自然の中で大切に受け継がれてきた、伝統的な織物や手工芸を学ぶ。
https://itori-vav.com

photo:Shingo Hikiami

eleven 2nd 2023AW

2023/11/10

会期:2023.11.23(木 祝)〜

11月は23日(木 祝)からeleven 2ndのニットの販売を開始します。たっぷりとご用意しております!
洋服の型も色数も以前より増えて見応えがあります。
Tシャツのように着るカシミヤは引き続き絶対的お薦め(これを知ったら辞められない)ですが
ヤクウール、ラムズウールのような柔らかく、強く、毛玉になりにくく、軽く、暖かいニットもあります。
カシミヤとは違ってボリュームがありながらも着心地が良いそれらは、いかにも冬らしい装いといったかたちと素材感。
一年を通してもっとも冬が好きな私にとっては、まるまるとニットに包まれるのも楽しみなのです。
もちろん、定番のカシミヤのセーター、Tシャツ、デザイナー橋本靖代さんによる手編みのニットも販売いたします。

作家在廊:23日(木)、24日(金)

https://eleven2nd.com

photo:Shingo Hikiami

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