志賀裕昭 - 乾漆展

2026/10/31

会期:2026.11.7(土)〜17(火)
作家在廊:11.7(土)〜8(日)
会期中無休

photo:Kazumasa HARADA


木地を使わず、石膏型でかたちを成形している。麻布を糊漆で貼り重ね、層のように素地を作っていく。それは木では実現できないフォルムの薄さ、柔らかさが特徴的である。そして、表面的な漆の層が薄く引き締まっているから、落としても衝撃が少なく、漆が割れにくいという特性がある。漆は傷や割れを接着して内包するから、上書きが出来る。土に還らず残るし、塗り足せるし、塗料としての機能はペンキのようだが、自然物という点で現代的な素材に思える。

展示をはじめるにあたり、当初は日常に浸透している数もの、プロダクト的な作品を目指していた。石膏型を用いてかたちを複製することは出来るが、脱乾すると型は消耗する。つまり、一作品に一石膏型が必要。実際は、完成まで最低一年を要する乾漆の量産には限界がある。紆余曲折あって、いまだ。作品は漆という液体が全体を包み込んでいるけれど、月日をかけて層にした、内側の工程が滲み出るものになった。表面の仕上げは意図的に飾らなくても、自然と表情には変化が生まれる。光を吸収した漆の美しさは、素地の強さがあってこそ見えてくるのだ。

志賀さんとは15年くらい前から「いつか、なにか、出来ないか?」と話をしてきた。長く文化財修理の仕事をしていたこともあり、数年間は彼自身の作品など見たこともなく、ただただ話をしてきた。彼が数ものを目指したのは、わかる気がする。自らつくっておきながら、そこに自分の気配など存在しない世界を見たいのかもしれない。矛盾しているけれど、そこに辿り着けたら本当に気持ちが良さそうだ。少なくとも15年前より荷物は軽いし、これからも変わっていくであろう。きっと時間の層がそれを示してくれるに違いないと、私は信じている。


略歴
志賀裕昭
Hiroaki SHIGA

1979年 福島県いわき市生まれ
2006年 東北芸術工科大学大学院漆芸修了
2008年 目白漆芸文化財研究所入社
2012年 祐天寺寺宝(漆工品)修理室勤務、文化財修理に従事
2023年 福島県いわき市にて独立


photo:Kit

MAISON GRAIN D’AILE
Aurora GHOST / 現象

2026/10/20

会期:2026.10.31(土)〜11.10(火)
作家在廊:10.31(土)〜11.1(日)

STATEMENT
Ghost - 気配の可視化 -

私たちは、目に見えるものだけを認識しているわけではない。
ここに在ったものの記憶、感情、想像。
形を持たないそれらは、ときに確かな気配として残る。

この星から採取した光と、そこに生まれる気配を、身体に纏うことのできる存在として可視化する。
自然に生まれたバロックパールに宿る光を、空に浮かぶオーロラになぞらえ、その不確かな浮遊感をひとつの形にした。


<現象>時間の中に残された衣服を空間へと沈殿させ、そこに在った身体の記憶と気配を残す。

身体に纏われるものと、空間に沈澱するもの。
異なる場所に現れる二つのGHOSTが、ひとつの空間に共存する。


略歴)
MAISON GRAIN D’AILE
Maki HARADA

2000年、MAISON GRAIN D’AILE(メゾン・グランデール)は、フランスや日本の古物を扱うことから始まった。
長い時間を経たもの、そこに残された痕跡や美しさを収集し、ものを選び、空間を構成してきた。
長年の収集と、ものを見つめてきた時間を現在の制作の根として、

時間を経たものの中に残る、気配や痕跡。
目には見えなくなったもの、記憶や思考。

それらを別のかたちとして浮かび上がらせ、作品を制作している。

2026年の発表作品には、GHOST、GHOST PEARL、「現象」などがある。


池多亜沙子 - 四時

2026/09/27

会期:2026.10.10(土)〜27(火)
作家在廊:10.10(土)〜12(月)
会期中無休

亜沙子さんと出合って、かれこれ十年以上が経った。LINEで何気ない日々の出来事、愚痴を聞いてもらうことは日常のひとつであり、それが同じ調子で続いていることに驚いてしまう。大なり小なり事件は起こるのだが、月日が過ぎてみると何も変わっていないような気もするのだ。相変わらず亜沙子さんは夫婦で営む喫茶店の仕事に忙しく、制作は営業を終えた真夜中にはじまる。しんと静まりかえった世界で、深い夜の灯りの下で進んでいく。「不工ふく」「無丘むきゅう」など繰り返し書くことば、数にまつわることばが多い。例えば、「四時しいじ」には春夏秋冬……一年を成す四つの時、という意味がある。儚くも、強く立とうとする「四時」の二文字にさまざまな思いがめぐる。これは昨日今日のことではない。肉体化された時間が刻んだ線だと私は思っているから。

そして、午前四時のはなし。時計の針が四を指すころ、夜はまだ終わっていないが朝はすでに始まっている。人の気配がほぼ止まっている一方で、空はまだ暗くても、太陽は地平線の下から空を照らしはじめる。私は夜とも朝ともどちらとも言えない、ほんの少しばかりのこの時間が好きだ。何かが見える気がするし、起こる気がするのだ。実体はないが予感はする、という希望。だから我われが目指すべきは、四時なのである。


略歴)
池多亜沙子 / Asako IKEDA
金沢市出身。幼少より書を始める。臨書をライフワークとし、古典をベースとした作品を制作。韓国・ソウルに拠点を置き「雨乃日珈琲店」を運営しながら、個展やグループ展で作品を発表。店舗ロゴや書籍タイトルなども手がける。

Glass,Held / いつくし

2026/09/10

会期:2026.10.6(火)〜2027.1.10(日)
場所:いつくし

group exhibition
Glass, Held
at itsukushi
1-30-2 Aobadai, Meguro-ku, Tokyo, Japan


artist/
Miki Komatsu,
MAISON GRAIN D’AILE
and Kit

壷田太郎 - ガラスのコップ

2026/07/31

2026.8.8(土) ~ 18(火)
作家在廊:8.18(土)~ 19(日)
会期中無休

シンプルな小皿を素地にして焼かれた、たくさんの釉薬テストピース。それがはじまりだった。工業高等専門学校で材料工学を学んだというだけあって、実験好き。身近にある土や砂を採ったり、混ぜたりして、窯の中で起こる化学変化を楽しんだピースだ。見込みが平らで、少しだけ縁が立ち上がったかたちは、身近にある瓶の底を型にしたそうだが、図らずも好み。あまり考えずに闇雲に焼いてみたら?と言うと、彼は本当に焼いてきた。たくさんの成果物を並べながら、いろいろなことを話したものだ。それは私たちがなにが好きで、どんなことが嫌いか──終始そのようなことだった。

ある日、コップをひとつ持ってきてくれた。お気に入りのガラスコップで型を取り、口元や底の柔らかなラインがつるんと現れるように工夫されている。90%ガラス質で出来ている陶土で焼いているから、うっすら透ける、まさにガラスのコップ。学生時代にガラスを使った研究課題が楽しかった思い出や、素材としての美しさに憧れがあることを話してくれた。

この夏は薪窯だけでなくガス窯でもたくさんコップを焼いた。同じものはなく、どれが完成でもなく、すべては実験の途中かもしれない。窯出し後の融栗谷は、小さな生きものが集まってきたように賑やかで、とても静かだった。自然発生したものは自然へとかえっていく。光にかざして見た憧れのかたちは、金すくいの末の結晶のようにキラキラしていて、雄大な自然と同じように美しく存在していた。



略歴)
壷田太郎
Taro TSUBOTA

1994年
三重県に生まれる

2020年
伊賀に住みはじめる

2023年
窯をつくる



壷田亜矢 展

2026/07/11

2026.7.18(土)〜28(火)
作家在廊:7.18(土)
会期中無休

ガス窯での作陶がはじまった。つい2ヶ月前、急にハンドルを切ることになったのだ。新しい土、釉薬、そして窯場。今まで向き合ってきた薪窯とは勝手が大きく違うけれど、培った経験と馬力は十分備えている。時間は無いけれど、やりましょう!そんな風にはじまった。

いろいろなことがあったのだが、そこから初窯まで辻褄が合わないくらい早かった。薪だから出るような重厚さ・味わいは無いが、土・釉薬の素材感をそのまま出せるガスの窯。質感が付かない分、ありのままの造形がいっそう見えてくる。少しグレーがかったり、ピンクがかったりした肌を見て、加工なしのグラビア、裸みたいだと思った。自然と人のエネルギーをたっぷり集めて焼く薪窯の仕事から飛び出して、こちらは究極にサクッと軽やかだ。かつての決まりごとから解き放たれたいま、楽しいですか?と聞いてみた。答えは言うまでもない。



略歴)
壷田亜矢
Aya TSUBOTA

1972年
愛知県安城市に生まれる

1995年
愛知県芸術大学陶磁器専攻科卒

1995年ー2026年
長久手ー伊賀ー高千穂の地を経て、穴窯・登窯で作陶する

2026年
ガス窯で作陶をはじめる



後藤洋司 製籠展

2026/06/12

2026.6.13(土)〜23(火)
作家在廊:6.13(土)〜14(日)
水木定休

ある初夏の朝。目覚めてすぐ、ベッドの中でinstagramを開くと青竹の籠が目に飛び込んできた。あ、綺麗。特別なにかが特徴的なわけではないが、画面越しでも、不思議と心惹かれてしばらく見入ってしまった。そんなことは珍しい。テキストを読むと、まさに今日から展示会とのこと。行こう!そんなこんなで飛び起きてから数時間後には、会場にいる作家と会っていた。そこで、二種類の籠を持ち帰ることにした。ひとまず洗った食器の水切り籠に、もう一つは脱衣籠にしたのだが、それは前からあったかのようにわが家に馴染んでくれた。


なにかと籠の類は好きで、かたちや素材が面白ければ、一旦は目的を忘れて使うことにしている。自ずと生活の中で使いみちが決まっていくし、軽くて丈夫な籠はいくらあっても困ることはない。改めて振り返ると、出所を問わず古いものを選ぶことが多く、それは農作物の収穫用だったり、なにかを運ぶための道具だったり。用途がはっきりしているものほど、どうしてこの設計になったのか腑に落ちるし、推測するのもまた楽しい。時には、間に合わせで用意されたであろう不揃いな素材を、どうにかこうにか大きなひとつの塊に編み上げた籠も、少し歪だからこそ愛おしいと感じる。後藤さんの籠に惹かれたのは、計算された美しい建築物のなかに、無記名の古いものにも通じる愛嬌を感じたからかもしれない。


後藤さんは竹細工の産地である大分で製籠を学んだそうだが、旅が好きで、さまざまな風土に触れてきた。そんな経験のなかで出合った、人々の暮らしのなかに生きている民芸品の姿が好きなようだ。春に工房を訪れた際は、棚田が幾重にも広がる山道を走り、近くの竹林を見学した。帰りは鉄輪温泉でひとっ風呂浴びて、散歩してから帰ることに。地元で長く商売されているお店では、当たり前に備品として使われている竹籠の風景を見たのだが、使い込まれて良い色になった籠を見ると、やはり良いなと思う。聞くところによると、私が美しいと感動した壮大な棚田は行政の政策で大区画化され、削って一枚にされる予定だそうだ。当たり前にあると思っていたものが、今日では失われつつあるのだが、青い竹の香り、最初に感じたみずみずしい自然の気持ち良さ…その静かな存在はあの棚田の美しさに通じているような気がしてならない。




略歴)
後藤洋司
Hiroshi GOTO

中本純也

2026/04/29

2026.5.9(土)〜19(火)
作家在廊:9(土)
会期中無休

朝は静かにやってくる。

ゆっくりとコーヒー豆を挽く音が鳴りはじめ、まだ薄暗い台所にケトルの湯気が立ちのぼる。

しんと静まりかえった山の家に、光は真っ直ぐ降りてくる。


ー inner light(内なる光)


ふと、そんな言葉を思い出す。誰にしも降り注ぐ、小さな光。

暗闇に潜んでいたものへ少しずつ陽が届き、やがて一日は動きはじめる。調律のように繰り返される日常から、白い器は生まれる。



略歴)
中本純也
Junya NAKAMOTO

1998年 和歌山県龍神村へ薪窯を作るため移る
2011年 焼締から白磁の器に



photo : Shingo HIKIAMI

原田教正
A slice of time

2026/01/29

2026.1.30(金)〜2.17(火)
作家在廊:1.30(金)〜2.17(火)
水木定休

どうやら時間は直線的に流れてはいないらしい。ときどき、そんな時間と戯れてみる。いつもより早起きをして、無目的に見知らぬ土地に移動する。数時間後にはどこかしらの場所に降り立つことができるし、唐突に体をポーンと放り出して、初めての景色に出合うのだ。ローカルバスに揺られて行けるところまで行ったり、ご当地グルメをハシゴしたりして、なんとかその日中に帰り、いつもと同じ時間帯にはベッドに入っている。まるで無かったかのような1日を振り返ると、劇的なことは起こらないのだが印象的な場面は2つ、3つと断片的に浮かんでくる。そういう日は時間をワープするかのような大移動をしたせいか、肉体に負荷がかかり、とても消耗してしまう。時空を圧縮したんだから仕方ない…そんなことを思いながら、深い眠りにつく。

2025年に月刊原田教正(Monthly Kazumasa Harada)と称して、習作を発表していただいた。静物、人物、風景などの被写体を等しく扱い、淡々と目の前の現象を捉えている。作品とそれに添えられた小文も”かたち”であり、その写真と言葉は似ているように思えた。再び光を通して、私は写真が内包する時間を見ている。小さく切り取られた四角のなかに、細切れで、並べ替えられ、圧縮された、あの懐かしい時間を思い出さずにはいられないのだ。

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2023年9月、ベルリンに渡った。
それは、写真と叙情の癒着について改めて問うことに始まり、物事はどのように存在し、変遷しているのか、その客観的な事実と断面を深く観察・考察したいとの思いからだった。
私たちの生きている時間は、本当に線のような形状で続いているのだろうか。全く異なる出来事の断面が、無意識のうちに数珠繋ぎになっているだけだとしたなら、写真はそれらを分解できる極めて興味深い装置と言えるだろう。
本展示では、2025年1月からKit onlineで”Monthly Kazumasa Harada”として連載した作品を発展させ、散文のような形で展示いたします。昨年9月には正式にベルリンに居を移し本格的にドイツと日本を往来する生活となるなか、一貫して続いてきた写真を巡る思考の軌跡と対話の断片を、ご覧いただけますと幸いです。


ー 原田教正


略歴)
原田教正 | Kazumasa Harada
1992年東京生まれ。2016年に武蔵野美術大学映像学科卒業後はコマーシャルフォトグラファーとして活動する傍ら、積極的に展覧会や写真集の制作を続けてきた。2020年には初の写真集『Water Memory』を刊行し、その後『An Anticipation』『Obscure Fruits』などを刊行。2023年にはベルリンでの滞在制作を経て『時間の園丁』(南青山information)での展示や写真集『My origin photographs』を新たに刊行。2025年9月から本格的に制作拠点をベルリンに移す。

https://www.kazumasaharada.com

大滝郁美
väv – Vinter
織 - 冬

2025/11/09

2025.12.6(土)〜16(火)
作家在廊:6(土)
会期中無休

väv(ヴェーヴ)はスウェーデン語で「織る」の意味。今年はカシミヤの単糸を使い、より薄く・軽やかに仕上げた正方形のスカーフサイズを織っていただいた。とにかくこのサイズは便利。室内でもシルクスカーフのようにクルクルっと巻く。ハンカチのようにクシャクシャっとポケットに仕舞う。もっと寒い時は、大判のストールと重ね付けしても良いだろう。凍てつく冬のなか、太陽の光のように明るく射す色を織る。スウェーデンで染織物を学んだ大滝さんならではの大胆な色の取り合せ、複雑な図案が目を惹く。

イエローを基調として、さまざまなラインが走るスカーフには35のパターンが織り込まれている。もともとサンプルとしてリネンで意図せず織られた、素材の欠片だったが、私にはキラキラと魅力的に映った。既にそこに存在する、ありのままを風景にしてもらい、結果的には細やかなテクニックを盛り込んだ、贅沢な1枚となった。

相変わらず、ほとんどの糸を自身で染めている。例えばイエローという色にもグラデーションがあり、この場合は青みを感じるレモンのようなイエローだ。小さいが、スカーフの顔をしたテキスタイル-väv-の醍醐味を大いに感じる。それは色、手触り、温もりといった感覚的に好きな要素と要素をギュッと建築学的に詰め合わせにした、とてもハッピーなセットなのだ。

略歴)
大滝郁美(Ikumi OTAKI)
山形県出身。スウェーデン、ダーラナ地方にある手工芸学校で3年間、現地の文化や自然の中で大切に受け継がれてきた、伝統的な織物や手工芸を学ぶ。
https://itori-vav.com

石原真理
Mari KNITTING

2025/11/07

会期:2025.11.15(土)〜11.25(火)
作家在廊:15(土)
会期中無休

真理・編みもの。確か、数年前も自動的にこのタイトルを付けた記憶がある。そう並べて記したくなるくらい、季節を問わずに編んでいるそうだから。金木犀が終わり、台湾椿が咲き始めた。冬の到来を感じていたところ、久しぶりにセーラーウォーマー、手袋、マフラーなどが届く。早く正しく美しくつくられた既製品に慣れ親しんでいる私だけれど、この手編みはそんな洋服にもよく似合う。どこか分からないが異国的な色、懐かしいかたち、ふっくらと空気を含んだ、手編みならではのこの感触。人の温度を通して作品は完成する、という真理さんの言葉があるが、まさしく。遠くて温かい記憶を手繰り寄せていると、子どもの時に好きだった絵本を久しぶりに開いた日のことを思い出した。寒い冬の中にある温度は、温かな感情を紡いでいくから好きなのだ。

大矢拓郎
S・F盆 展

2025/10/05

会期:2025.11.1(土)〜18(火)
作家在廊:1(土)、2(日)
会期中無休

ふらりと訪れてくれたのは5年くらい前。小さな我谷盆や拭き漆のお盆など、手刳りの作品をいろいろ持って来てくれたことを思い出す。例えるならば、どこかの古民芸店に入って偶然に見つけたような、無記名の木工品みたいだった。いま現在つくっているものが、背伸びしすぎず等身大の姿に近い気がして、自然とやり取りが始まった。

我谷盆のような、木の塊にぶつかっていくような仕事を好み、荒彫りをしたあとカンナやノミを使う。「駄作でも、たくさん手を動かしていた方が良い」と言うだけあって、これまで多くの習作を見てきた。そんな中から、大胆なノミ目が気持ち良い隅丸重箱、紙箱のような名刺入れなど、やはり古物のような佇まいの、しかし独創的な作品が生まれていると思う。

我谷盆に憧れて木工の道に入ったという事もあって、原点である手刳盆に力を入れているのだが、特に印象的な作品を二つ。一つはノミ目が破壊的に素晴らしい、松の讃岐盆。時間とともに、松脂が全体的に馴染んで艶が出てくる。もう一つは生漆(きうるし)仕上げの栃の藤原盆。拭き漆以上・溜め塗り未満で、木目を生かさず殺さず、うっすらと奥に木目を感じる程度に塗り重ねて黒漆の佇まいに近づけている。古いもの、美しいものへの憧れ ー その眼差しがうつし変える新しい色かたち。時代や地域は異なるが、木をかたちづくる感触自体は今も昔も同じであり、手で削った感覚を大事にしている。ただし忠実なトレースではない、念の為。ということで、それぞれS盆、F盆と記号的に表記していくことにした。



略歴)
大矢拓郎 / Takuro OYA
1986年 誕生
2012年 京都伝統工芸大学校木工芸専攻卒
2012年 佃眞吾に弟子入り
2018年 亀岡にて独立

Photo:Kazumasa HARADA

2025年下半期スケジュール

2025/09/04

7月19日(土)ー29日(火)壷田和宏・亜矢

8月16日(土)ー26日(火)柴田有紀

9月13日(土)ー23日(火)MAISON GRAIN D'AILE

10月11日(土)ー21日(火)黒畑日佐代

11月8日(土)ー12月2日(火)大矢拓郎

11月15日(土)ー25日(火)石原真理

12月6日(土)ー16日(火)大滝郁美


展示の規模は大小いろいろです。
予定は変更になる可能性があります。事前にweb site、SNSをご確認のうえご来店いただきますようお願い致します。

展示会の詳細はこちらのHPで随時ご案内しております。

MAISON GRAIN D'AILE
l’ Art Japonais / ラールジャポネ
- ジャポネの骨董と西洋のエッセンス -

2025/09/01

会期:2025.9.13(土)〜23(火)
作家在廊:13(日)
会期中無休

はじめてMAISON GRAIN D’AILEの扉を開けたのは、2000年代半ばの頃だと思う。神戸の古いビルディング内にある小さな一室に、フランスで買い付けられた古くて美しいものが並べられていた。そこに広がっていたのは、まさにCabinet de curiosités / キャビネ・ド・キュリオジテ(和訳:驚異の部屋)の世界観であり、部屋の隅に佇んでいた磁器人形のような店主の存在は、作品の一部のように印象に残った。

キャビネ・ド・キュリオジテはルネサンス時代に始まった、剥製、鉱物、植物、昆虫、貝殻、骨など自然物を中心に人工物も分け隔てなく収集した、珍しいものを並べる展示形式で、博物館の原型とも言われる。人工物というところでは、「ユニコーンの角」のような実在しないものの存在が信じられ、本物と称して贋物が陳列されたりしていたそうだ。目に見えないものを見ようとする人間の想像力は、また別次元の新たなものを生み出す。MAISON GRAIN D’AILEが表現する世界には、現在から過去を見る/過去から未来を見るような、不思議な時間軸が出来ていた。フランス、ヨーロッパだけではなくアジア諸国、日本の古物も並列されていて、特に日本のものは逆輸入されたような感覚で対面することになり、そういう意味でも新しく目に映ったものだ。私はそこで初めて古伊万里の白磁猪口をいくつか購入し、今でも愛用している。

大阪・北浜時代を経て、琵琶湖のほとりに建てた住まい・アトリエはギャラリーを暮らしの中に昇華させた場所で、現在も増築・改修工事が続く。開業から25年が経って、フランス現地に買い付けに行くことは少なくなり、改めて日本美術への思いが募っているという。今では私も同業者として二人を訪ね、たびたび対話しているのだが、目下、未来は火星に移住して骨董屋を営んでいるイメージだそうだ。いつか、これぞという品々を抱いて渡り、火星人を驚かせたい、そんな話をしてくれた。ユニコーンの角を思い描いた、先人の夢のようではないか。いつか誰かが見た夢は我われのものでもある。私がずっと感じていたのは、よく形容されるであろう重厚で静謐な世界観ではなく、膨大な量の収集物や時間の重さを突き抜けるような、圧倒的な軽やかさ。火星人が驚くところを一緒に見たい…そんな話をしながら、グランデールとは、浮遊する種子=とても軽い、と言う意味であることを思い出していた。


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2025年9月に25周年を迎えるMAISON GRAIN D’AILE(メゾングランデール)の展示販売を行います。長きに渡ってフランスの古物を中心に収集し、空間をつくり続けている二人。その経験、知識、目を通して、日本の古物が持つ美しさに焦点を充てた展示になります。


略歴)
MAISON GRAIN D'AILE
Shinsaku HARADA, Maki HARADA

2000年
メゾングランデールとして活動を始める。主にフランスを中心に世界中から美しい・古いものを収集しコレクション展を発表。当初から表現してきた、貝や鉱石・標本などキャビネ・ド・キュリオジテやシュールレアリスムなどの要素を含む古美術の世界を制限した色彩・物語性のある構成を用いて独自のスタイルで確立

2015年
住まいとアトリエを琵琶湖のほとりに移し、MAISON GRAIN D'AILE の家をデザイン・建築。

大阪・北浜にて、より本質的なオブジェを紹介するGALERIE AU BOIS - ギャルリ・オーボワを2018年12月末まで運営したのち、現在はオンラインストアにて販売を続けている。

maisongraindaile.com

photo:Kazumasa Harada

柴田有紀 展

2025/08/02

会期:2025.8.16(土)〜26(火)
作家在廊:17(日)
会期中無休

まだ武蔵美で助手として働いている柴田有紀さんに会いに行ったのは、3月だった。様子を伺いつつ、なんとなく今年の方向性を話す。とりあえず何かを掴もうと手ぶらで行って、抽象的な話で終わってしまうことが多いのだが、この日もそうだった。具体的にかたちとなって一つ二つと便りがあると、ようやく調子が出てくるはずが、歯車がなかなか合わず、更に予定外のこともあって気付けば8月。DM用の写真も撮影できないまま計画が狂いに狂って、会期が一週間遅れてしまった。

そんな中でも明日また初日を迎える。ギリギリ滑り込みで届いた作品は、前回よりもっと磨かれて、新しく、素直な柴田さんらしいかたちばかりだった。奇跡的なタイミングで二度に渡り写真に収めていただくことも出来て、こうなったらこの瞬間も撮ってもらいたかったなー、と切ないほど。ピースはバラバラだったものの、最後にはちゃんと合った。それぞれが似合うような場所をつくりながら、探しものが見つかったような気分だった。


吹きガラスとパート・ド・ヴェールの作品がある。ガラス粉末を石膏型の中で熔融して成型するパート・ド・ヴェールの作品に、美学生が練習で描く静物画のような佇まいを感じていた。型づくりに関しては、身近に既にあるものを型に取る、吹きガラスで制作したものを型に取る、粘土でかたち作ったものを型に取る、などの方法を取っているが、直接ガラスという素材を手で触れることが出来ない吹きガラスに対して、パート・ド・ヴェール作品はもっと自分らしい”かたち”に向き合っているような気がしていた。今回は、そのパート・ド・ヴェールで取り組んでいるような彫刻的なかたちを、吹きガラスに持ち込んでいただいた。

二つの技法で、柴田さんらしい、でも新しいかたちが引き出されたと思う。直前まで色んなことを話したが、キーワードは”静物画”だった。

photo:Kazumasa Harada

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