ANSPINNEN + LO

2022/11/24

会期:2022.12.10(土)- 19(月)12:00-18:00

ANSPINNEN(スピネン)といえばまずカシミヤ。ランクに大きな幅があるというウールやキャメル、近年人気のヤクなども原材料から厳選して仕入れをしている。すべては良質な糸、そしてその糸に相応しいかたちをつくるためだ。
販売をするにあたって千葉にある工場を訪ねた。紡績から 撚糸 ねんし までを一貫して秋田工場で行っているが、糸のプロトタイプをつくるために千葉にも小規模の機械が一通りあるという。到着するやいなや「好きな糸で撚糸をしてみませんか?」と突然のワークショップが始った。カシミヤとウール糸3本を選び、機械で1本に り合わせるというもの。コーン状に巻かれた糸を年代ものの撚糸機にセッティングし、スイッチを入れるとゆっくりと動き出した。ちょっと生き物っぽい。無数の手足が うごめ くかのように忙しくスピードを上げてあっという間に完成。静かな工場に文明開化の音が響き渡っていた。

紡毛 ぼうもう 紡績にまつわる機械はシンプルなもので仕組みが昔からほぼ変わってないというが、手で要所要所を微調整することで糸の個性が出る。紡毛は昔ながらの手紡ぎに近い、柔らかくて膨らみのある糸をつくること。その段階では 糸面 いとづら は綺麗になり過ぎず風合いもあり過ぎない程度に調節するが、そうした糸から出来た1枚は日々使い込むことによって膨らみを増し、ちょうど良い風合いに育っていく。今では貴重な手動の横編み機・ 手横 てよこ でつくるカシミヤのストールはANSPINNENのテクスチャーを表す代表格ともいえるが1日10枚編むのが限界だという。

この秋冬に惹かれたのがパール編みのキャメル。キャメルは砂漠に暮らすため高山地帯に生息する獣毛に比べて通気性に富みドライな素材感が特徴だ。おじさんぽいラクダ色をあえてシンプルなかたちと昔馴染みのあるパール編みで表現するのがオールド・ファッションで良い。縫製された製品は洗いにかけて縮絨し、完成している。人の目に映るまでには知られざる長い道のりがあるが、受け継がれた技術と思いはこうして日々運ばれているのだ。



ANSPINNEN 略歴
創業1952年の小金毛織が2019年に立ち上げた日本初のファクトリーブランド。創業者が羊毛を扱う技術をイギリスに学び、日本に知識を広めたという社の歴史は長く、今では紡績から撚糸までの工程を一貫して行う国内唯一の 紡毛 ぼうもう ・紡績会社である。
ドイツ語の紡ぐ・つなぐという意味のSPINNENに、前置詞ANをつなげた名前は、紡績会社を基盤とし、ドイツ由来の機械を一部使っていることから名づけられた。

https://anspinnen.jp
instagram:anspinnen



LO(ロー)はイギリス・ノッティンガムで生まれた、香りの記憶から物語を紐解く9つのビーガンフレグランスキャンドル。
原材料として100%ナチュラルで遺伝子組み換えでない植物性の蝋を使用し、通常より高い濃度で蒸留されたエッセンシャルオイル、非蒸留のフレグランスオイルを混ぜることでより香り高いキャンドルを実現。職人の手作業によって伝統的な手法で蝋を注ぎ、新鮮さを保つために少量ずつ生産されている。キャンドルの芯は上質なコットンと紙のみを使用し、容器はリサイクルを心がける。すべてにおいて継続性があり追跡可能な素材を選別する、美しさと誠実さを兼ね備えたブランドなのだ。

初めてLOに火を灯したのはちょうどこんな寒い季節だった。あなたに似合う香りを選んできたわよ、と友人からプレゼントされたのだ。封を開けてみると、思いのほかふわふわしたピンクな花の香り。一瞬で心が華やいで気分が上向きになった。さすが分かってくれてるわー、とニヤニヤしたのを覚えている。
その夜、お風呂あがりに身体を整えながらLOに火を入れると、印象よりもずっと柔らかくて穏やかな香りがすっと体に入っていった。ゆらゆらと、熱くもなくぬるくもない源泉38度のお湯に浮かんでいるような幸せに思いを重ねて揺らいでいた。一日のあらゆる場面で、気分を変えたい時こそ火灯しごろ。マッチを用意してお待ちしています。

*キャンドルは定番の9種類のほか、クリスマスの香り”winter’s glow”をご用意します。その他、ハンドウォッシュ、ハンドクリーム、ルームスプレーも販売いたします。


https://lo.studio/jp
instagram:lo.studios.japan

hou homespun

2022/10/31

会期:2022.11.26(土)- 28(月)12:00-18:00
作家在廊:11.26(土)

home(家)spun(紡ぐ)の名の通り、家畜である羊の毛を刈り取り、その原毛を自宅用に紡いで織ったことがはじまりとされるホームスパン。糸を織ったり編んだりするとそれは1枚の布になるが、ホームスパンの場合は織ってから縮絨(いわゆるフェルト化)することによって更に繊維が空気を含み、ふっくらと起き上がる。さまざまな品種の羊毛をミックスしたりシルク、カシミアなどの異素材を混毛することもあるので、触って巻いてみて好きな感じを探ってみるのも良いだろう。素材の塊であり布としての面白味があるし、ナチュラルなだけではなく手のあとを逆に消したような化学染料の鮮やかな色や柄の設計も魅力的で、今年のhou homespunの”気分”が届くことを毎回楽しみにしている。

ということで今年の気分が届く。深緑にピンクの少年らしさもあるウィンドーペーンチェック、赤とピンクの最高可愛い毛布的チェック、紅白のエレガンスな格子やレモンクリームのボーダーに、プラムのような深紅の無地など。男性にも巻いて欲しいな。そして大作はこれ。シェットランドとメリノを混毛した糸で、経糸(たていと)は760本、ほとんど服地のようなスケールで織り上げられた大判のストール。裏面と表面の色を変える二重織り(昼夜織り)になっているので畑のようにほっくりとして豊かに見える。そして抱きしめたくなる肌当たり。裏返すと縞の幅が異なる部分があるので、巻き方次第で違った表情を見せてくれる。
このデザインはというと、ヨーロッパ上空を飛行中の機内から眺めた穀倉地帯の美しさに心打たれ、そのイメージを1枚に写したものだそうだ。私も低空を飛ぶ空からの眺めが好きで、規則的なものの並びや区画の取り方に惚れ惚れしていたのだった。自然と人工物がそこに気持ちよく共存していた。上杉さんもそんな風に眺めていたのだろうか?美が伝染したような、その人らしい落とし方が好きだ。つねづね自然は素晴らしいと思うが、こんな風に人がつくるものもまた、美しい。


略歴)
上杉浩子 UESUGI Hiroko
旅行や暮らしにまつわる雑誌・書籍の編集/ライターとして活動する傍ら、2006年より東京・清野工房にて清野詳子氏に師事。ホームスパンを学ぶ。
2010年恵文社一乗寺店ミニギャラリーにて初個展。以来、場所をKitにうつし、年に一度のペースでホームスパン作品の展示会を行う。


黒畑日佐代

2022/09/18

会期:2022.10.8(土)- 17(月)12:00-18:00
休廊:11(火),12(水)
在廊:未定

黒畑さんと私はふたつ違い。お喋りしていると同時代感がうっすら流れてきて昔はこうだったねああだったねとそれぞれの思い出話に花が咲く。意外なことに、子どもの時にはいつか雑貨屋さんになりたいと思い、ものを扱うなら作り手の気持ちが分かった方が良いのではないかとガラスを学んでから、焼きものに転じ落ち着いたそうだ。
今は福岡の山奥に小さな工房と家を構え、家族と暮らしている。ここで食卓を囲んでいるとかつて過ごした部屋を思い出す。それは6畳の子ども部屋で私はここを極私的スペース…城にすべく、夜な夜な家具の配置変えをしたり本の並びを変えたりフラワープリントのフォトフレームやドアノブカバーを作ったりと日々忙しくしていた。小さなおうち。そこではとても小さく、素敵なことが起こっていたような気がする。
黒畑さんの楽焼のカップを20年ぐらい前に購入し、気に入って使っていたが割れてしまった。再会して、あの時と土や釉薬は変わっているが今でも同じやり方で同じようなものを焼いていて嬉しくなった。使用する灯油窯が小さいことからカップや豆皿などが多く、どれも生活に身近な愛らしい小作品だ。楽焼は窯から出してすぐ急冷するため、黒く貫入が入る。そんな可愛いやら渋いような感じも好きなのだが、なんといっても厚くも薄くもない体と口元が良い。料理に負けず、勝ちもしない最高のバランスなんじゃないかと私は思っているが、そのまんま置いているだけでも成立する。轆轤だけでなく、手のひらで押したり時にはくり抜いてつくるものに黒畑流の造形を感じていて、日常にそんな精確なかたちが在ること、実はそれが一番の魅力だと思う。
朝一番、小さなマグでお白湯をまず一杯。ひとり分の目玉焼きとベーコンとウインナーを焼いて5寸の皿に盛る。相変わらず私は今でも小さな部屋に住んでいて、このぐらいのサイズ感でちょうど良いかな、なんて思っている。なぜだろうか、この柔らかい器には朝の光がよく似合う。今日もここから小さくて素敵な日がはじまる。


略歴)
黒畑日佐代 KUROHATA Hisayo
1979年 富山県生まれ
1999年 能登島ガラス工房吹きガラス1年コース修了
2001年 岐阜県立多治見工業高等学校陶磁科学芸術科卒業
2007年 福岡県うきは市に開窯

写真:高橋マナミ

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///サウスアベニュー新茶会///

10.8(土)12:00~18:00
今年は世界情勢に翻弄され9月にはかなわず、10月8日(土)に開催となりました。
お茶当番は移動喫茶キンメさんです。
今年も皆さまのご来店をお待ちしております!

中本純也

2022/09/02

会期:2022.9.10(土)- 19(月)12:00-18:00
休廊:6(火),7(水)
在廊:9.10(土)

ロボットは心を持つようになるのだろうか?
2019年の展示会ではそんな話をしていたが、会えば未来の話をしている。長らく一緒にやってきて、さて今回のために作ってくれた作品を並べてみると…ずっと作り続けているもの多数。生活の中によくある、普通の、使いやすいもの。ギザギザの豆皿も、カプセルみたいな蓋物も、のっぺらぼうみたいなお皿も、スプーンも、何度も何度も見てきたものだ。ただ、注文を繰り返すと同じものでも仕上がりが変わる(変えてくる)ので、別もの???となってしまい、売る側としては困惑することもしばしば。前の方が良かったとか今の方が良いとか色んな声があるけれど、どうしようもなく通り過ぎていく。ゲゲッと思った瞬間に、そうだよなあ。同じものは出来ないよなあ…と納得もしてしまうのだ。中本さんはやりたい事をたくさん詰め込まず、大事なポイントをひとつ守ると決めているそうだ。例えばリム皿の場合は白い面を綺麗にする。面と面のつなぎ目を綺麗にする。折り紙みたいな言い方をするなあと思いながら、お米みたいにつるんと美人のリム皿を眺めた。今回のは青味も灰味もなく、なんにもない白らしい白だ。つなぎ目とはリム皿の線のことで、二本にすると柔らかい印象になる。

どう生きてきたか、なんてことを山ほど話してきた。以前は土器に憧れて焼き〆一直線。庭には当時焼いた茶色い甕とか鉢なんかがゴロゴロ転がっている。色いろあって今は白磁をしているが、本人は変わらずに土器なるものを焼いているつもりらしい。昔の人が生きていくために焼いた雑器中の雑器であり、交易や社会と繋がる手段でもあった沖縄のパナリ焼みたいなイメージがそこにはある。もはや土器を見て土器を焼かず。土器は白磁でも焼くことが出来るのだと、腑に落ちた。私たちが見ているかたちは実はイメージなのかもしれない。
中本さんは時どき雑誌のスクラップをしている。切り貼りした洋服や雑貨や骨董を指差して「これとこれの要素を組み合わせたい」なんて言う。およそ他人には理解できないが、私もそこから別の点を導いて意味を考えることをする。ものを見れば、分かる。そこになんらかの法則が働いていて、テトリスみたいに思考を組み立てているみたいだ。おおらかに体を動かしながらも、なにかしら数字を感じずにはいられない。

普通で良い、普通が良い、と多くの人が口にする。何のてらいもない、普通のもの。普通ってなんなんでしょう、と聞いてみた。 「普通は未来にある」との答え。普通はいつの時代も時と場合で変わりやすい。すぐに手元に掴むことは出来ない、心の中にあるものだ。あるものを見て閃き、「これで未来の器が作れるかも…」などと口走る中本さんはやや狂気じみているが、私も同じようなことを考えている。
私にとっての普通は、嫌じゃないもの。それは間違いなく自分の中にあるのだが、それが一体なんなのか。生きながら、働きながら、自分と社会と、どう折り合いをつけていくべきか。すべては人、もの、場所が表してくれる気がしている。皆さんの普通ってなんですか?中本さんによると、そんなことばかり考えている私も土器的生活推進研究員になれると。ヤッター! 時間切れ。「展示会のことですが、とりあえず、いつも通りに作っておいてください」として帰った。どうせ同じものは出来ないのですから。店をはじめて、中本さんと会って10年が経った。時代はますます乱世であるが、そんな中でも相変わらず、我われは未来のことを夢見つづけている。


関連イベント - Ottè beginning -
京都・物集女(もずめ)にて開業準備中の”Ottè”(オッテ)。薪窯のpizza、菓子、エスプレッソがメインのカフェです。

オーナーご夫婦はKitの10年来のお客さまであり、中本純也ファンでもあります。
そんなお二人が中本純也展に合わせて、2日間だけ出張喫茶してくれます。

これまでは自分たちのためにエスプレッソや菓子を愉しんできたお二人。まずはストレッチということで、ここから始まります。どうぞお楽しみに。

日程:
9.10(土)ー11(日)
各日
①12:30-13:30
②14:30-15:30
③16:30-17:30

メニュー:
エスプレッソとイタリア菓子”カンノーリ”
¥1,300

カンノーリはシチリアの揚げ菓子。今回はリコッタチーズをベースにしたクリームを巻いてチョコレートや果物をトッピングします。コーヒーはエスプレッソ、カップチーノ、アメリカーノからお選びいただきます。

ご予約について:
お名前(漢字フルネーム)
人数
当日ご連絡の取れるお電話番号
日程、希望の回
をお知らせください。

ご予約制です。
メールかお電話でお申し込みください。
sankakuha@gmail.com
075 744 6936

*メールでのお申し込みは、当店からの確認メールが届いた時点でご予約完了となります。

展覧会の様子は<こちら>

iroiro

2022/08/14

会期:2022.8.20(土)- 29(月)12:00-18:00
休廊:27(火),28(水)
在廊:8.27(土)-28(日)

私も激烈に愛用中のシルクのシャツ、パンツなどたくさん。今回は白黒グレーの定番色からチェックも。屑繭を撚ったシルク、高密度の綿パンなんかもございます。 買い付けの雑貨、民芸品、アクセサリーなども一緒に。あれこれ見ているとやっぱり雑貨って楽しい!夏はまだまだつづく。

華順

2022/05/01

会期:2022.5.14(土)- 23(月)12:00-18:00
休廊:17(火),18(水)
在廊:5.14(土)-15(日)

ブラウンの革が意外とトラ柄みたいに見えて、今っぽいと思った。カラフルなファスナーを合わせるとちょっとバッドテイストで80年代っぽいミックス&マッチのような気がする。なぜかすぐに「オリビア・ニュートン・ジョン」と思ってしまった。少しダサくて、かっこいいこの路線が私の大好物。華順さんの革小物は相変わらず手応えが良く、使えば使うほど馴染んでくる。
内容はそれほど変わらないがブラッシュアップをして形違いやサイズ違いが少し。そして座布団やバッグも。最近はsuicaやpaypayで買い物をすることが増えたこともあり、ますます財布は小さいポケットサイズ派だが、仕事用には持ち手付きのミニミニバッグのような長財布を使っている。何かと理由をつけ、用途に合わせて革小物をさまざま使い分けているが、このタイミングで買い替えの時期だと感じた。数年に一回、空気を入れ替えるかのごとくゲンを担いでメンバーチェンジするけれど、愛着があるので元メンバーも手元に残してある。ボタンやポケットのつき方、サイズ感が可愛い。
例えば、長財布でもなく小銭入れでもないMサイズは中で余白が出来て中途半端な大きさだが、使ってみると意外とその余白が使いやすいのだ。たまたま余った革で適当に作られた古いもののようで良い。
うーん、ゆるい!ギチギチに設計されていなさそうな、ゆるゆるとした無記名性に惹かれるのかも。いつもなら無難に黒でまとめたり、風水を気にして緑とか金とか赤を選びそうな私だが、今の気分をすくい取るならトラ柄。この時代はそんな風にゆるく選んでみようと思う。



華順 /  Kajun
大学では美術史を専攻。卒業後は働きながらデザイン学校の夜間部に通い、立体デザインを学ぶ。
プロダクトデザイン事務所に勤務し、その後オーダーメイドの革鞄店で修行を積み、独立。

Picnika

2022/03/31

会期:2022.4.9(土)- 18(月)11:30-18:00
休廊:12(火),13(水)
在廊:4.9(土)

大通りから一本入り住宅街の裏道をくねくね曲がって行って辿り着いた古い一軒家。手描きの看板「Picnika」を目印に傾いた階段を上がると、そこにベレー帽を斜めに被ったボーダーシャツの店主・津留慎太郎ひとり。木彫りの人形みたいで可愛い。いくつかの小さな部屋に分かれた店内はペイントされたアッシュグレーの木の家具とかフォークロアな刺繍の衣装とか異国情緒あふれる民具なんかが、やや所帯じみた実家感を醸し出しながら並んでいた。ここはどこ?な世界だが異邦人なのは私。まるでセットのような可愛いお店にクスッときてキュンとしたのを今でも覚えている。チェコ、ハンガリー、ルーマニアなどの東欧諸国での買い付けが多いのは、エミール・クストリッツァの映画や写真家、エッセイストのみやこうせいの著作に感銘を受けたことがきっかけらしい。最初に訪れた店舗は取り壊しのため立ち退き、今は別の場所に移っている。さらに家具メインの店「Magazyn」も新たに立ち上げたが、彼がつくる場所は絵画的風景があり、どこへ行っても旅の余韻が静かに流れている。

器、家具、民具、衣装などトータルなバイイングの中でも密かに楽しみにしているのは布や古着。さすがこやつはベレー帽を斜めに被るだけあって女子か!?と思うほど乙女な色や柄の選択。小花模様やハートモチーフは店内のどこかしらに散らばっていて、ふと幼い頃に『赤毛のアン』に憧れてフラワープリントのツーピースを着たり、パンプディングを焼いたり、ハート型のフォトフレームを作っていたことを思い出した。遠のいてはいるが簡単によみがえる私が好きだったこと。ここにそれが確実にあるなああ…とうなりながら手をのばすそれを、カントリー・フォークロアと呼ぶことにしよう。



ピクニカ 津留慎太郎 / Picnika TSURU Shintaro
1982年 熊本県阿蘇に生まれる
2001年 高校卒業後、漠然と自分の店を始めたくてお金のために株式会社マツダに就職
2004年 古着屋を始めたいと思いマツダを退職し、アメリカを1ヶ月半視察
2005年 ユニクロなどでアルバイト。エミール・クストリッツァ監督映画やみやこうせいさんの写真集などを見て東欧に興味を抱く。古着ではなく古道具屋をやりたいと思うようになる
2007年 思い切ってお店を始めようと東欧五カ国を旅し買い付けをして、そのままpicnikaを開業
2021年 福岡市早良区四箇に家具をメインとしたMagazynをオープン

壷田和宏・亜矢

2022/03/15

会期:2022.3.19(土)- 28(月)11:30-18:00
休廊:22(火),23(水)
作家在廊:3.19(土)



壷田さんの地元である 黒原 くろばる の原土を粘土にし、炭化させた作品がある。グレーに茶や黒のまだらな点々が入った、恐竜のたまごのような、薄めにカリッと焼いたお菓子の失敗作みたいな。美味しそうには見えないが、口をあててみたくなり、使ってみようと思った。炭化は土に含まれる酸素を完全に奪ってカラカラにするということらしいから、水に強く、料理の色やにおいも付きにくく、思っていたより料理に取り入れ易いということが初めて分かった。花を生けるにも良くて、食料を保存にもするにも適している。焼き〆は日常的には使いみちが限られるというイメージが覆った。これはいい。そんなわけで、今回は炭化を中心にお願い!ということになった。

自宅兼工房では薪を準備し、パンの生地を発酵させながら、ほぼ見た目が同じの粘土を精製したりしていてパン職人(もしくは錬金術師)のようで不思議。 黒原 くろばる 、唐津、伊賀、 猿投 さなげ などの土を使うが、粘土にすると性質がかなり違うので、特性に合わせて形をつくる。そこに決まりは無く、二人がそれぞれにつくる形は即興のさまざまな音色、実験音楽みたいだ。毎回が予測不能、バラバラで楽しい。炭化だけでなく釉薬を着せない土の耐火鍋や白磁の焼き〆もあり、裸のまんまの土の器や道具がたくさん出来た。一部をのぞき色んな茶、黒、茶、黒の大連続になるが、個体差がすごいので思いっ切り土を感じて埋もれてください。



壷田和宏 亜矢 / TSUBOTA Kazuhiro,Aya
1972年 和宏、三重県伊賀市に生まれる
     亜矢、愛知県安城市に生まれる
1995年 愛知県芸術大学陶磁器専攻科卒
    愛知県長久手市に登窯を築窯
2000年 三重県伊賀市融栗谷に穴窯築窯
2009年 宮崎県高千穂五ヶ所に登窯築窯
2011年 同地に穴窯を築窯

IG X
© SANKAKUHA inc.