hou homespun

2022/10/31

会期:2022.11.26(土)- 28(月)12:00-18:00
作家在廊:11.26(土)

home(家)spun(紡ぐ)の名の通り、家畜である羊の毛を刈り取り、その原毛を自宅用に紡いで織ったことがはじまりとされるホームスパン。糸を織ったり編んだりするとそれは1枚の布になるが、ホームスパンの場合は織ってから縮絨(いわゆるフェルト化)することによって更に繊維が空気を含み、ふっくらと起き上がる。さまざまな品種の羊毛をミックスしたりシルク、カシミアなどの異素材を混毛することもあるので、触って巻いてみて好きな感じを探ってみるのも良いだろう。素材の塊であり布としての面白味があるし、ナチュラルなだけではなく手のあとを逆に消したような化学染料の鮮やかな色や柄の設計も魅力的で、今年のhou homespunの”気分”が届くことを毎回楽しみにしている。

ということで今年の気分が届く。深緑にピンクの少年らしさもあるウィンドーペーンチェック、赤とピンクの最高可愛い毛布的チェック、紅白のエレガンスな格子やレモンクリームのボーダーに、プラムのような深紅の無地など。男性にも巻いて欲しいな。そして大作はこれ。シェットランドとメリノを混毛した糸で、経糸(たていと)は760本、ほとんど服地のようなスケールで織り上げられた大判のストール。裏面と表面の色を変える二重織り(昼夜織り)になっているので畑のようにほっくりとして豊かに見える。そして抱きしめたくなる肌当たり。裏返すと縞の幅が異なる部分があるので、巻き方次第で違った表情を見せてくれる。
このデザインはというと、ヨーロッパ上空を飛行中の機内から眺めた穀倉地帯の美しさに心打たれ、そのイメージを1枚に写したものだそうだ。私も低空を飛ぶ空からの眺めが好きで、規則的なものの並びや区画の取り方に惚れ惚れしていたのだった。自然と人工物がそこに気持ちよく共存していた。上杉さんもそんな風に眺めていたのだろうか?美が伝染したような、その人らしい落とし方が好きだ。つねづね自然は素晴らしいと思うが、こんな風に人がつくるものもまた、美しい。


略歴)
上杉浩子 UESUGI Hiroko
旅行や暮らしにまつわる雑誌・書籍の編集/ライターとして活動する傍ら、2006年より東京・清野工房にて清野詳子氏に師事。ホームスパンを学ぶ。
2010年恵文社一乗寺店ミニギャラリーにて初個展。以来、場所をKitにうつし、年に一度のペースでホームスパン作品の展示会を行う。


IG TW
© SANKAKUHA inc.