壷田和宏 亜矢 ー 続 炭化焼き〆

2025/07/03

会期:2025.7.19(土)〜7.29(火)
作家在廊:19(土)
会期中無休


熱量で焼く土のかたち

窯の中の酸素を奪い、高い温度・熱量を与えて焼き〆る、炭化焼き〆。2022年の展示では穴窯で焼くこの技法を中心に制作をしていただいた。壷田和宏・亜矢さんの表現方法は多岐に渡り、それぞれ魅力があるが、特に炭化は二人が大切にする土の特性・魅力を最大限に活かせた気がして、いつかまた続きをしたいと思っていた。

むしろ、炭化でしか上手く焼けないという 黒原 くろばる 原土は、 白粉 おしろい のようにキメ細かい土で、自宅の近くで採掘し、粘土にしている。他の土とは混ぜずに原土のまま焼くと、見た目とは真逆の印象的なグレー色になり、温度によってはベージュ・ピンクのグラデーションが付くこともある。この土は緩くて崩れ易く、大きく立ち上げるのが難しい。シンプルなプレートや高台の形状は、これが限界がゆえのかたちだそう。B品の器を鋳型にする方法は、粘土を精製する時にボウルに容れておいた土が、そのフォルムを自然に記憶して器のかたちになった経験から。素材と一緒に並走し、土が気持ち良く姿を留める点を探ったり、その辺りに散らばっている美を見い出し・引き出したりしながら、気持ち良くかたちは決まっていく。

壷田さんから、炭化は温度というより熱量で焼くと教えられ、その言葉が響いた。土に物理的な力を加えて色んな姿に変えているが、それは表面のはなしで、真ん中に感じるのは熱量の働き。見えないその力には日常の決まりごとから解き放たれた、ひと時の完全なる自由がパッケージされている。


略歴)

壷田和宏 亜矢 / Kazuhiro , Aya TSUBOTA

1972年
和宏 三重県伊賀市に生まれる
亜矢 愛知県安城市に生まれる
1995年 愛知県芸術大学陶磁器専攻科卒
愛知県長久手市に登窯を築窯
2000年
三重県伊賀市融栗谷に穴窯築窯
2009年
宮崎県高千穂五ヶ所に登窯築窯
2011年
同地に穴窯を築窯






黒原原土

この立ち上がりがギリギリだというプレート

成形している間にも崩れやすい、ゆるゆるの土

失敗した作品が鋳型になる

「底が可愛くなった♡」と喜ぶ壷田さん


登り窯で焼く

前回と今回で違う点がひとつ。本来の炭化は穴窯で焼くところ、今回は工夫して登り窯を使う。理由は2年前に穴窯が壊れてから、新たに作り直す余裕が無かったから。3つある部屋のうち、一番奥の大きな部屋で炭化焼き〆を、残りの部屋では炭化以外の焼き〆・釉薬ものを焼く予定。

天草白磁にガラスを混ぜたものが面白く出来そう、とテストピースを見せていただいた。グリーンがかったグレーとでも言うべきか、何とも表しがたい中間色で、感覚的に良いなと思った。よりプレーンな表情になるようにブレンドして登り窯で焼き〆たら、炭化の有/無でどのような違いが生まれるのかを対比してみたい。

こちらは登り窯で焼いたテストピース
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