臼杵春芳 展

2023/12/12

会期:2024.1.6(土)〜16(火)

久しぶりに臼杵春芳さんを訪ねた。先ずはところどころに植えた漆の木をチェック。 知り合いが持つ里山など、了承を得て数カ所に植えているらしく15年~20年で漆が掻けるようになるそうだ。元気に育っているものもあれば病気になった木もある。漆のストックが足りなくて、今年はまだ良いが来年、再来年はどうなるか…そんな話しを聞きながら山道を歩いた。

長らく木地を挽いてくれていたベテラン木地師さんは引退されたから、木地を用意するのにひと苦労していて、ここ2年間で状況は大きく変わっていた。そんな訳で今年は臼杵さん自身が轆轤を挽いた木地もあり、これまた私の好みである。数ものには出せない、ぽってりどっしりしたサイズとかたち。職人技のシャープでバランスの良い木地とはまた違った魅力がある。自然に生まれる漆の縮みや木屑の混入を生かした漆塗りは絵画的で、この漆の重なりこそ臼杵春芳だと思うのだ。

ここに来ると必ず同じうどん屋へ行き、漆の木をチェックし、最近の作品を見せてもらい、侃侃諤諤と話し猫を撫でて帰る。そんないつも通りの定点観測なのだが、確実に日本の漆は無くなりつつあるし、讃岐特有の轆轤を挽く木地師さんもいなくなってしまった。移りゆく時を感じながら、いま出来ることの中でなんとか生まれる作品を楽しみに待つばかりだ。


作家在廊:6(土)、7(日)

臼杵春芳 / USUKI Haruyoshi
1954年生まれ。1977年彫刻家新宮晋氏に師事。京都を拠点に建築家との共同作業で店舗や個人住宅の家具制作を行う。近年は工房を香川へ移し、漆の木の栽培をはじめ、漆掻き、木地師、塗師の一連の工程を一人で行っている。

www.usuki-koubou.com

photo:Shingo HIKIAMI

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