期間中休みなし
作家在廊:12(土)、13(日)

ある写真展の案内をふと目にして気になった。近づいて見た。写っているのは水辺か空か、写真か絵か、どっちが上で下なのか…これは何だろうか。気付けば熱が入り、青はプール、白はタイル、ピンクは何かのパーツ、多分ここはプールサイドと推理して、翌日にはその写真家に会いに行っていた。ただただ、好きな色の空気だった。
引網さんは大学では美術を専攻し絵を描いていたそうだが、時間をかけて完成に向かう絵画より、瞬間的に投影像を得る写真に惹かれていったという。極力余計なものを写していなくて、それは引き算とも少し違う。人の気配や自然の機微を感じながら捉えた瞬間を、なるべく触らないように、軽やかに圧縮しているように見える。
案内状には、この秋に刊行された『NO STRAY DOT』から、特に好きな二作品を選ばせていただいた。 映画「シザーハンズ」に出てきそうな陽気な家と、自然が織りなすグラデーションが圧倒的に美しい空。人工物と自然。相反するようだが私にとってそこは、とても懐かしくて遠い場所。畏れも憧れも抱きながら手が届かないのは心の中に存在するからだと思う。遠くにある星を眺めているようで実は心の内に近づいていく、誰しもに訪れるそんな普遍的な瞬間を、この作品は保存しようとしているのではないだろうか。
展示では作品および写真集『NO STRAY DOT』を販売致します。
1980年 和歌山生まれ。
カリフォルニア州立大学卒業後、2012年から上田義彦氏アシスタントを経て、フリーランスの写真家として独立。
https://www.shingohikiami.com
photo:Shingo HIKIAMI