植田楽

2022/12/20

会期:2023.1.7(土)ー23(月)12:00-18:00
作家在廊:7(土)、8(日)

数年前に知人のアトリエを訪問した時のこと。「時間ありますか?上の階に面白い子がいるんで、ちょっと見ていきませんか。」と誘ってもらった。ふらっと何気なしにお邪魔することになり、そこに楽(ひらく)君がいた。とても若い青年で、紙を芯にしてセロハンテープで動物や恐竜をつくっているという。結論から言えば、ひと目見てすぐに好きになってしまった。もう実存しない生きものとか絶滅危惧種なんかが多いが、カンフー映画の悪役、アクション俳優、女子プロレスラーなど画面の中のキャラクターらしき作品もある。身体の厚みとかかたちが劇画調なのも気になるし、スカートの裾がヒラっとなっていたり、爪の先がふっくらしていたり、ピストルの引き金にバネが効いていたり…クスっとくる。ディズニーとか手塚治虫の漫画が質感を醸し出してくるように、動きがあって面白い。

もともと恐竜のおもちゃを両親に買ってもらったりしていたが、欲しいと思う恐竜を図鑑を見てつくるうちに手持ちのものとマッチしなくなり、自作のキャラクターを増やしていったそうだ。そんなことを繰り返しているうちに上手くなってしまったという技法は自己流で、たとえ架空の生きものだとしてもリアリティにこだわっているように思う。
彼の趣味は腕相撲でアトリエには筋トレ用の器具が置いてある。展示を見にきてくれたお客さんと突然の勝負が始まることもしばしばあるらしく、そんなこんなで出来た作品が勝者のために捧げられるブラキオサウルスのトロフィー。勝ちたい、勝ちたすぎるー!相変わらず作品を見ると静かにクスクス笑ってしまうのだが、このクスクスは純度高めのポジティブエネルギー、幸せの音だと思うのだ。


略歴)
植田楽 Hiraku UEDA
1993年京都生まれ。京都嵯峨美術大学現代アート領域専攻科卒。約20年間、紙とセロハンテープで、主に動物や恐竜をモチーフに制作。

https://ueda-hiraku.com/

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